線路の喪服女
投稿者:ヲヲッシュ (5)
これは、私が小学生の頃体験したお話です。
季節は春ごろで、日曜日にいつも通り自転車で友達の家へ向かっていました。
途中に線路がある道をいつも使っていました。
その日、線路に差し掛かると、自分がいる場所から少し遠い線路上に人影があるのに気が付きました。
何か探したり、困ってたりする人がいるのかなと思い、線路前で自転車に跨りながら止まって、人影を注視しました。
その人影は、女性でした。年齢は20代か30代でしょうか。晴れているのに、黒い傘を差しています。おかしいな、と思いもっと注視すると、黒いワンピースのような服を着ています。
当時小学生の私はよく分からなかったのですが、あの服装は喪服だ、と後で分かりました。
おかしな格好で線路上にいるな、と思った途端、なんだか不気味な感情が込み上げてきて、早くこの場を去ろうと思っているのに、体が硬直してしまいました。
見つめたままでいると女性は、突然線路上で走り出しました。私から遠ざかる方向だったのでその時はホッとして身体も動きそうだったので、友人宅に向かおうと思いました。
私が動き始め、線路の真ん中に差し掛かった時、なんと、走っていた女性が突然、こちらの方に向きを変え走って来ました。
かなり遠くの方へ行っていたはずなのに、どんどん距離が近づいてきます。ヒールも履いているのに、線路上でこんなスピードはおかしい!そう思った時、傘で隠れた顔から口元が見え、ニヤリと笑っているのが見えました。
それを見た途端私は自転車を一瞬で発進させ、全身全霊のフルスピードで漕いでその場を離れました。絶対に振り返らず、そのスピードで友人宅まで行ったのを覚えています。
友人宅でさっきあった事を話したかどうか、その記憶は曖昧です。とにかく私は混乱していました。
それ以来その線路には近づかず、友人宅に行くのにも遠回りして行っていました。
一体あれは何だったんでしょうか。幽霊でしょうか。人だったんでしょうか。どちらにしても怖く、大人になった今でもあの線路には近づく事はありません。
線路に飛び込み自殺した方かもしれませんね。