異次元マンション
投稿者:アストロ (1)
マンションの。
思考が。
マンションの。
それより先を考えられない。
悪寒がした。
なにかおかしい気がする。
だがもう自分は彼女の前に立ってしまっていた。
目の前の女性の顔が、認識できない。
人の顔があるはずなのに、何がそこにあるか分からない。
声も出せず立ち尽くしていると、彼女は首を傾げ、先へと行ってしまった。
聞こえてきた話し声によれば言葉は分かる。
だが駅の地下通路とはこんな景色だったか?
なにかが普通と違う壁、なにかが普通と違う床、なにかが普通と違う天井。
なにかがズレているそれらが目の前のすべてだ。
自分がさっき拾い上げたもの、あれがなんだったのか説明できない。
人間とは、どういう形をしていたっけ?
なにかが理解できない。
目の前の光景が理解できない。
手に持ったなにかを、出来るだけ遠くへ投げ捨てる。
自分だけが異物だ、となんとなく理解してしまった。
孤独を感じた。
自分はこの世界の人間ではないのだ。
何故そんなことを思った?不思議だった。
だがいつの間にか、違う世界に迷い込んでしまった。そんな気がした。
そんな訳がない、なにかの理由で幻覚でも見えていて、恐怖で妄想が広がっているだけに違いない。
来た道を戻っているが、通路は延々と続いている。
間違いなく来た距離よりも戻っているのに、駅にたどり着かない。
息切れをし始めた。
長い距離を歩いて疲れたからではない。ただただ怖かったのだ。
自分はどこにいるんだ?
外界とのつながりが欲しかった。
自分が、これまで生きてきた世界に居ることを証明したかった。
携帯電話を取り出す。
誰か、誰かに電話をかけよう。
電話帳から母の番号を選ぶ。
焦って操作している筈なのに、自分の動きが長い。まるで永遠のものにも感じられた。
頼む、一刻も早く。
知っている声が聞きたい。
この世界とのつながりが。
つながりが欲しい。
んー?ご両親は亡くなったのですよね?ちょっと私も異次元に迷い込んだのかよくわかりません。。