マンションの。
思考が。
マンションの。
それより先を考えられない。
悪寒がした。
なにかおかしい気がする。
だがもう自分は彼女の前に立ってしまっていた。
目の前の女性の顔が、認識できない。
人の顔があるはずなのに、何がそこにあるか分からない。
声も出せず立ち尽くしていると、彼女は首を傾げ、先へと行ってしまった。
聞こえてきた話し声によれば言葉は分かる。
だが駅の地下通路とはこんな景色だったか?
なにかが普通と違う壁、なにかが普通と違う床、なにかが普通と違う天井。
なにかがズレているそれらが目の前のすべてだ。
自分がさっき拾い上げたもの、あれがなんだったのか説明できない。
人間とは、どういう形をしていたっけ?
なにかが理解できない。
目の前の光景が理解できない。
手に持ったなにかを、出来るだけ遠くへ投げ捨てる。
自分だけが異物だ、となんとなく理解してしまった。
孤独を感じた。
自分はこの世界の人間ではないのだ。
何故そんなことを思った?不思議だった。
だがいつの間にか、違う世界に迷い込んでしまった。そんな気がした。
そんな訳がない、なにかの理由で幻覚でも見えていて、恐怖で妄想が広がっているだけに違いない。
来た道を戻っているが、通路は延々と続いている。
間違いなく来た距離よりも戻っているのに、駅にたどり着かない。
息切れをし始めた。
長い距離を歩いて疲れたからではない。ただただ怖かったのだ。
自分はどこにいるんだ?
外界とのつながりが欲しかった。
自分が、これまで生きてきた世界に居ることを証明したかった。
携帯電話を取り出す。
誰か、誰かに電話をかけよう。
電話帳から母の番号を選ぶ。
焦って操作している筈なのに、自分の動きが長い。まるで永遠のものにも感じられた。
頼む、一刻も早く。
知っている声が聞きたい。
この世界とのつながりが。
つながりが欲しい。

























んー?ご両親は亡くなったのですよね?ちょっと私も異次元に迷い込んだのかよくわかりません。。