異次元マンション
投稿者:アストロ (1)
朝登った階段を降りる。
夜の建物には独特な雰囲気があるものだが、電気も付いているし、別段怖さは感じなかった。
屋内だからだろう、靴音がやけに響く。
コツコツと反響を繰り返す音が、逆にその音以外の静けさを強調させる。
そういえば、やけに静かだ。朝からひとけを感じることもなかった。
思考が巡っている。怖さは感じない?大人だからと強がっているだけだったかもしれない。
子供の頃、暗い場所でひとりで過ごした時の気持ちを考えて、その怖さを思い出しているのかもしれない。
これだけ色々な事を考えるのは、自分をごまかしたいが為なのかもしれない。
探偵は自分をそこまで分析する余裕があった。時間の余裕がだ。
自分はどれだけ階段を降りただろう。
延々と同じ景色が繰り返されている。
壁に書いてあったはずの階層表示はいつのまにか消えていた。
なにかおかしい気がする。
廊下へと続く扉に手をかけるが、開かなかった。
不思議ではあるが…まぁ、それならもっと降りていけばいいだけだろう。
何故か探偵は楽観的な気持ちで居た。
そういえば、持ち込んだパンを昼に食べてからは何も口にしていない。
この後は何を食べようか。こんな時間だ、今日もコンビニ弁当か…
探偵は階段を降り続ける。
これだけ歩き続けていると、階段の隣のエスカレーターが羨ましくなってくる。
気づけば、ゴトゴトと聞こえる機械音は、エスカレーターのものだけではなくなっている。
電車の動く音だ。
改札も見える。どうやらようやく地下鉄駅にたどり着いたようだ。
その場で辺りを見渡していると、ちょうどエスカレーターから降りた女性が落とし物をした。
気づかないまま行ってしまいそうな彼女を見て、その落とし物を拾い上げ後を追う事にする。
改札を入らないでくれてよかった。
通路を行く彼女に追いつき、落としましたよと声をかけるが、反応がない。
それどころか段々と歩くのが速くなっていく。
仕方なく追いかけ、繰り返し声をかけるがそれでも反応はない。
困ったな…探偵はどうすべきか考えた。
とりあえず、彼女を追い越して前に立てば止まってくれるだろう。
探偵は走り出す。
すぐ止まってくれたらよかったのに、面倒だな。
拾わなきゃよかったかな、なんて事を考える。
そもそもここは何処だ?どこまで歩いてきた?
結構な速さで歩いていたからな。
何処?そもそも、なんで駅に来た。
自分が歩いていたのは、マンションの
んー?ご両親は亡くなったのですよね?ちょっと私も異次元に迷い込んだのかよくわかりません。。