異次元マンション
投稿者:アストロ (1)
長編
2022/11/13
16:39
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「おかけになった電話番号は現在使われておりません」
電話から聞こえてきた音声案内に、探偵は心の底から震えた。
唸り声か、怒鳴り声か、よくわからない言葉をただただ叫ぶ。
声が、通路に響く。響く…
音が何重にも。
叫び声とともに、自分は目を覚ました。
夢か。
よくある夢だ。
そうか、夢か。
頬も、双眼鏡の跡も、涙で濡れていた。
だが、ようやくあの恐怖から解放されたのだ。
窓の外を覗く。
見慣れた8階からの景色に心の底から安心した。
そうだ、母に会いに行こう。
存在しない、と言われたようで怖かった。
だから母の場所へ行くのだ。
いつもの寝床から、扉を開ける。
台所では母がいつも通り料理をしているはずだ。
うちの母は料理がうまい事が自慢なのだ。
台所に立つ影はこちらに気づき振り向いた。きっと自分を見つめてくれている。
よく見えないが、きっと微笑んでくれているのだろう。
母の顔が思い出せない。
音が聞こえてくる。それはきっと優しい言葉だ。自分を安心させてくれる。
気持ちは伝わってくる。
それだけでいい。
それだけでいいのだ。
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んー?ご両親は亡くなったのですよね?ちょっと私も異次元に迷い込んだのかよくわかりません。。