厄介な特技

私には少し厄介な特技があります。
高校生の頃、ドラマか何かの影響でミサンガが流行りました。
私は小物やアクセサリーなどを自作するのが趣味だったので、頼まれれば頼まれただけ喜んで作っていました。
ある日、ミサンガをあげた友人から「願いが叶ったよ！」と報告を受けます。
作ったことを忘れていたような人たちからも次々と感謝されました。
ところがそれと同時に”誰かの不幸”を耳にする機会が驚くほど増えたのです。
「○○部のエースが事故に遭った」
「××先生が風邪をこじらせて入院した」
「可愛いと評判の後輩が転んで顔に怪我をした」

などなど偶然と言えばそれまでなのですが、頭の片隅に嫌な想像がよぎりました。
”誰かの不幸”を誰かが願ったのでは？
私の作ったミサンガがそれを叶えたのでは？
……とはいえ確証もなく、友人たちに問い質す勇気もなく、誰も、何も語らないまま時間だけが過ぎました。
そして一年後、私たちは何事もなかったかのように卒業しました。

当時の友人たちとは社会人となった現在も付き合いがあります。
先日、特に仲の良い子と飲みに行きました。
彼女は酔いが回ったころ、私があのとき聞けずにいたことを話し始めました。
「○○先輩がいなければ自分がエースになれると思った」

「死なない程度に事故に遭えとミサンガに願った」
「同じようなことを願った子は他にもたくさんいる」
さらに彼女は続けます。
「一ヶ月前、好きな人の彼女が車で事故った」
「命に別状はないけど顔に大きな傷跡が残るらしい」
「もうわかるでしょ？あなたからもらったミサンガ、一本とっておいたの」

私の”厄介な特技”はこれです。
私は何の意図もなく呪物を作ってしまうのです。
それはミサンガだけなのか、そしてどれほどの効果があるのか、私にもわかりません。
だから、ネットフリマに出品した”ミサンガ風ブレスレット”を買ってくれた皆さん、気を付けてください。
ついうっかり「願いが叶う…かもしれないブレスレット」なんていう売り文句を付けましたが、それは誰かを不幸にする呪物かもしれません。