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不思議体験

安楽城さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

背中越しに呼ぶもの
短編 2021/02/19 22:55 2,127view

数年前都内で一人暮らしをしていた時の話です。築30年近くは経っている古いマンションに住んでいました。
ある夏の熱帯夜、寝苦しい部屋の中で何度も寝返りを打って、やっとまどろみ始めたころ、体の上に何か圧力のようなものを感じ、体が動かなくなりました。

「ああ金縛りか」

私はなぜかしょっちゅう金縛りにあっていたので、あまり怖くはありませんでした。
今回も金縛りが解けるまで大人しくやり過ごそうとしました。

そして目をつぶってじっとしていると、後ろから人の声がしました。

「おーい」

それは母の声でした。
その声を聴いた途端、恐怖から心臓が強く脈打ちました。
なぜなら最初に申した通り、私は当時一人暮らしです。この部屋には私しかいません。

私は壁側を向いて寝ていたのですが、本当に真後ろに「何か」の気配を感じました。その「何か」が私の真後ろから呼びかけの声を発していたのです。
母の声で。

母に成りすました異質なものがこの部屋にいる。
絶対に、絶対に反応してはいけない。とにかくこのままやり過ごすしかない、とぎゅっと目をつぶって息をひそめていました。
するとまた後ろから声がします。

「〇〇!〇〇っ!」(〇〇は私の名前です)

まるで反応しない私をなんとか振り向かせようと、じれったい感情をにじませながらその「何か」は私に呼びかけ続けていました。
しばらく息を殺していると、後ろの何かは声を発しなくなりました。
いなくなったのか?と考えていたその瞬間、

ぺた。

私のタンクトップで空いた背中に、生ぬるい手のひらがくっつきました。
背中を叩いたり、ちょっと触れたりとかではなく、手のひら全部を背中にくっつけてきたのでした。

その瞬間もう恐怖が限界に達し、部屋中に響く声で絶叫した瞬間、ようやく金縛りが解けました。

金縛りが解けてからも、あまりの恐怖に体を動かすことが出来なかったのですが、そのままいつの間にか眠りに落ちてしまいました。
気が付くと朝になっており、いつも通りの部屋で、もう何かの気配を感じたりすることはありませんでした。

この体験の後、なぜあの「何か」は私の名前を知っているのだろうと、不思議に思っていたのですが、1週間くらい前に母を部屋に招いたことを思い出しました。

もしかしたらこの「何か」はずっと部屋にいる霊のようなもので、母が訪問してきたときに母の声や話し方を覚えていたのかもしれません。
それとも母の生霊だったのか、とも思います。

出来ることなら後者であってほしいのですが…。
本当に一体何だったのでしょうか。

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