奥の和室の押入れ
投稿者:ねこじろう (147)
「和室の押し入れに、何かいるような気がするの」
それは土曜日の夜のことだった。
食事の後、リビングの食卓テーブルに座る洋子は不安げな表情で、目の前に座る俺に呟く。
「だいたい洋子は神経過敏過ぎるんだよな。
何にもいるはずないじゃん」
そう言って俺は可笑しそうに笑った。
すると彼女は少しむきになった様子で話を続ける。
「だって今日も昼間、奥の和室を掃除していたら、押し入れの中からゴソゴソ音がするから勇気をだして『誰かいるの?』と言うと、ピタッと止んだのよ」
「そ ら み み。
空耳に決まってるさ」
「違う。空耳なんかじゃない。
一回や二回じゃないの。
こんなことがこれまで真っ昼間に何回もあったのよ。
だから私、前月ここに引っ越してきてから奥の和室の押入れだけは怖いから触らないようにしてるの」
さすがに俺もちょっと腕を組んで
しばらく考えた後、
「う~ん、こんな都会にイタチやタヌキなんかいるはずないしなあ。
それできみは俺にどうして欲しいの?
一緒にお化け退治をしてくれとでも言うの?」
と少し強く彼女に詰め寄った。
「そういうわけじゃないんだど……」
すると洋子は困ったように下を向いた。
しばらく二人の間に沈黙が続く。
沈黙を破ったのは俺の方だった。
「ちょっと聞くけど、きみの言うそのおかしな現象が起こるのは昼間ばかりなのかい?」
彼女は俯いたまま微かに頷く。
「ということは、そのお化けは夜は押し入れでじっとしてるんだ」
「分からない。
ただ夜、物音を聞いたことはないわ」
「意外と、そいつ今は押し入れで寝てるかも」
これは傑作。
変なおじさん
小さいおじさん、見てみたい。