マッチングアプリの女
投稿者:ねこじろう (147)
言われて俺は、昨日会った加那という女の外見をスタッフに伝えた。
するとしばらくパソコンのキーボードをカタカタと叩く音がしたかと思うと、再びスタッフの声がする。
「おかしいですねえ、、、
こちらの資料では、橋本加那さんというのは23歳のOLさんで、スポーツ観戦が趣味の中肉中背の明るいタイプなんですけど。」
「え?そんなバカな」
─でも確かに加那というあの女は、約束の時間に約束の場所に現れた。
もしあれが本当の加那さんではないとしたら、いったいあの女は何者だったんだ?
思いながら俺は、目の前のデスク上にあるパソコンのフォルダを開いて、加那さんの写真を探す。
だが不思議なことに写真は見当たらなかった。
「何かおかしいので、私の方でもう一度加那さんに事情を聞いて、また連絡しますね」
そこでスタッフとの会話は終了した。
俺は電話を切った後、軽くシャワーを浴びると、部屋着のままサンダルをひっかけ、近くのコンビニまで歩いた。
ビールでも飲まないと、その日は眠れないと思ったからだ。
500ミリリットルを一缶買うとレジ袋を片手に提げたまま、書籍コーナーで立ち読みをしていた。
しばらくしてふと顔を上げると、雨でも降りだしたのか、正面の暗いガラス面に水滴がポツポツと付いている。
ヤバイ、そろそろ戻らないと、、
と、雑誌を棚に戻そうとした時だった。
サッと生ゴミのような臭いが鼻を掠めると、
マタアイタイヨ、、、
突然低く掠れた女の声がした。
驚いて正面のガラスに視線をやる。
一瞬でゾクリと背筋が凍りつき、一気に心拍数が上がる。
そこには
暗いガラス面に映っている自分の上半身。
そのすぐ後ろに、麦わら帽子をかぶった白いワンピースの女が俯いて立っていた。
【了】
怪異もマッチングアプリをやる時代になったのかぁ