後部座席の女の子
投稿者:ぴ (414)
何かと思って周りを見渡したけど、何もありません。
気のせいかと思って、私は後部座席の後ろのガラスをなんとはなしに見たのです。
そしたら女の子がへばりついていて、その目と目が合ってしまいました。
女の子は一瞬で消えていなくなったけど、私は叫ばずにはいられなかったです。
「ギャ~~~~!!!!」と叫んで飛び起きた私に、前の席にいる友達たちはパニックに陥ったみたいでした。
比較的冷静沈着な裕子が運転していなかったら、私たちはそのまま事故を起こしていたかもしれないです。
急に飛び起きて叫んだ私に前の席の友達はびっくりしていました。
そしてあまりにびっくりして泣きながら「後ろに女の子がいる」と情緒不安定に指さす私を見て、みんなすーっと青くなったのです。
結局その日は熱海の温泉旅館で泊まったけど、翌日は観光などする余裕もなく、みんなでぐったりしたまますぐに家までトンボ帰りしました。
盛り上がる予定だった旅行はぜんぜん盛り上がらず、帰り道でもすすり泣く女の子の声が聞こえることが度々あり、私たちは最悪の思い出を作って、旅を終えました。
帰り着いて私はみんなを家にまで送り届けました。
そして速攻で車の持ち主に車を返しにいったのです。
車を返しにいったのが昼過ぎだったので、車を貸してくれた友達は不思議に思ったのでしょう。
「もう帰ってきたの?」と驚かれました。
そして私が旅行中に何度もあった後部座席のすすり泣く女の子の話をしたのです。
最初は笑われるかバカにされることを覚悟したけど、話をし終わった後に友達の顔を見たら、顔色が土気色みたいになっていました。
怪奇現象を体験した私たちですらそこまでじゃないというくらいに顔色が悪くって、私はびっくりしました。
様子がおかしい友達に「どうかした?」と聞いてみたら、友達はよろよろと車の外から後部座席のほうに歩いていきました。
そして外から後ろのタイヤをチェックして、「ひぃ」とうめき声みたいなものを上げました。
何かと思って慌てて私は友達と一緒に後部座席のタイヤを見たのです。
そこに一瞬べったりとした血のようなものが付着していて、一緒に腰を抜かしそうになりました。
本当に一瞬の出来事で、見間違いだったかもしれません。
でも確かに赤黒い血のようなものが付着しているように見えたタイヤは次の瞬間には普通のタイヤに戻っていました。
友達がぶるぶる震えている姿はかなり不審でしたが、私は今みた幻覚が本当に怖くて一刻も早くこの場から去りたいと思いました。
だから「車、本当にありがとうね」とお礼を言って、様子がおかしいその子に車と車のキーを返したのです。
私はすぐに家に帰り、また日常に戻っていきました。
その一週間後くらいに、車を貸してくれた友達が交通事故で亡くなったという訃報を聞きました。
飲酒運転をして車ごと電信柱に突っ込んだらしいです。
打ち所が悪くて、即死で帰らぬ人になりました。
確かにあまり真面目ではない子でしたが、いくらなんでも飲酒運転で事故を起こすほど馬鹿な子だったとは思えません。
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