親友からのメッセージ
投稿者:旧少女 (1)
お昼になって試験が終わり、携帯の電源を入れると、同じ番号から着信が2件ありました。
かけ直すと、入院している親友の妹さんからの電話でした。
「姉が、亡くなりました。」
その言葉を聞いた瞬間、血の気が引いていくのがわかりました。
「え・・・・?」
もちろん、そんなに軽い病気でないことはわかっていました。
でも手術も成功して、治療も頑張っていて、経過だって悪くないと聞いていたのです。亡くなるなんて、思ってもいなかったのです。
絶句している私に、妹さんは続けました。
「お姉ちゃん、今日の朝、起きた時はとても気分が良かったみたいで、音楽かけてって言ってきたんです。私のイヤホンをかしてあげて、その曲を流すと、
お姉ちゃん、ハミングしだして、トランペットをエアーでやり出して。何度も何度もリピートしてかけて、それをやるんです。その曲が・・・」
曲名を聞いて、私は試験会場の廊下で、声を出してわんわん泣いてしましました。
聞くと、それは私が純喫茶でモーニングを食べながらその曲を聞いていたのとちょうど同じくらいの時間でした。
同じ時間帯に、同じ曲を聞いて、もう10年ほど前の事を一緒に思い出していたのです。
彼女はトランペットを吹き、私はサックスを吹いていました。
朝から晩まで練習して、たまに二人で吹いて、吹き終わったらいつも、目を合わせてにっこり笑っていました。
「にっこりしててよ!」この前会った時、最後にそう言ってくれたその声が頭の中に響いて涙が止まりませんでした。
「ごめん、本当にごめんね。」そんな気持ちでいっぱいになりました。
親友のお葬式も終わり、私は彼に会い、話す決心をしました。
いつも通り車で迎えに来てくれる彼。
険しい顔の私に彼は心配そうな顔をします。
その顔を見るとやっぱり辛くて、でも勇気を振り絞り「あのさ、ネットで見たの、その、奥さんとお子さんが、、」
そこまで言うと「ああ、ばれちゃった?」と笑う彼。
予想外の反応に何も言えない私に「ごめんごめん、そういうことなんだけどさ。でも気にしないでいいから。」と彼。
この時にやっと悟ったのです。この人には誠意というものがないということ。
この人を選ぶということは、「にっこり」を選ばないということだ、と。
しかし言葉が出てこず、絶句していたその時、車に流れるラジオで流れてきたのが、あの曲だったのです。
私と親友との思い出の曲。
「にっこりしててよ!」親友の声が頭の中に響き、私は力いっぱい彼のほほをひっぱたき、「お疲れ。」と言って車を降りました。
誰が自分のことを本当に想ってくれているのか、それをちゃんとわかることの大切さ、
「にっこり」は自分で選んでいかないといけないという事、
生きていることがどれだけ尊いかという事。
親友が命を持って教えてくれたんだと思います。
ええ話やないか