ボロボロの化け物

どうやら足は遅かったらしく、吊り橋を渡り切った所で振り返ったら、その姿は無かったそうです。
時計を見たら、最初に駐車場に来てからまだ一時間しか経っていませんでした。
なぜだかとてつもなく長い時間を過ごしたかのようでした。

ここにずっと居るのも、安心できないと思い自転車があった所まで戻って、帰ろうと自転車に跨り、ペダルに足を掛けました。
ふと、視線を感じ階段のほうを見ました。
そこには、何者かがこちらを見ていたのです。
遠いのであまり良く認識出来なかったのですが、髪はボサボサで、目は笑っていたような気がします。

すぐに目を反らし、見なかったことにしました。
全身に鳥肌が立ち、一目散にペダルを漕いで帰りました。

その後、親に今回あった出来事を全て話しました。
そしたら、めちゃくちゃ怒鳴られました。
だからあれだけ行くなと言っただろう、と。
親は言いたくなかったみたいですが、理由を全て話しました。

親も昔、Ｋ公園で友達とよく遊んだ事があるそうなのです。
私と一緒で、好奇心も旺盛だったので、遠回りのルートで行ってみたらしいんです。
吊り橋を抜け、獣道を抜けたら芝生が見え、建物が見えたそう。
中までは覗かなかったらしいですが、同じように森林のほうから「ガサガサッ！」と聞こえたそう。
私は、見ないで逃げましたが、親はあの化け物を見てしまったそうです。

親も振り返らずに一目散に逃げましたが、一緒に居た友達は躓いて転んでしまったんです。
そこで起こしてあげようとしたら、ソイツは直立で走ってこっちに向かってきました。
たまたま、そこに熊狩りのおじさんがいたらしく、ソイツに銃を放ちました。
足にヒットしたらしく、逃げていったそうです。
もし、熊狩りのおじさんが居なかったらと思うと、今でも寒気がするそうです。
四つん這いだったのも、そういう事があって足を負傷していたからだったんですね。

その後、怖くなって眠れなかったので家を引っ越しました。

後日談ですが、この出来事があった１０年後くらいに、小学生が行方不明になった事件が起こりました。
私がかつて住んでいた町ではありませんが、Ｋ公園に近い町です。
その子は今もまだ見つかっていないそうです。
それはあの化け物の仕業なのかもしれません…。