ある宿泊所の地縛霊
投稿者:補欠車掌 (1)
短編
2022/08/29
02:33
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とある、駅の宿泊所の話。
列車が運行を終え乗務員の宿泊する施設が終着駅にはあるのだが、その宿泊所の3番目の部屋に泊まると地縛霊にあう話を休憩中に先輩社員から聞かされた。
勤務を終え、寝る前にテレビを観ながらお菓子をつまんだ。冗談交じりに話をしていたその先輩はからかうように怖がる僕の方を見て笑っていた。
「ちょっと、先輩やめてくださいよ。そんな怖い話を聞かされたら夜眠れなくなりますって。」苦笑いをしながらそう言った。
休憩所のテレビを消して、薄暗い洗面所へと向かう。
しかし、ここの宿舎は昭和の時代に建てられた本当に古い建物で薄気味悪かった。
水道の蛇口から垂れる水の音がポタポタと静まり返った建物の中に響き渡っていた。
ベッドに横たわり、仰向けになり天井を見ると斑点のシミが見える。それらのシミはまるで血痕のようだった。
先輩の言っていた話は、本当だったのかもしれない。
次の瞬間だった。
身体が凍り付いたように固まり、身動き一つとれなくなったのだ。
「動けない。誰か助けて。」
そう叫びたくても口を開くことすらできなかった。
白い女の影のようなものが僕の中に入り込もうとしてきたのだ。
「おい、しっかりしろ!」
先輩社員にたたき起こされると、我に返った。
目が覚めると、寝汗がびっしょりとベッドについていた。
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