見なければよかった
投稿者:樽 (1)
誰もいないし、タワマンはまだ建て始められたばかりで、一階から上に登る階段がない。
あれが人ならどうやって登ったの?
その疑問が湧いた時、ヒッと小さな声が喉から漏れた。
その時だった。
チラチラと動いていた光が止まり、
カツン、カツン、とコンクリートを叩く音に変わった。
上から、少しずつ、降りてきている。
それがわかった時、限界だった。
友達の手を取り一気に逃げた。
走って走って、塾の教室まで逃げた。
教室の中はいつも通りで、そのまま授業を受けたけれど、
内容は頭に入ってこなかった。
あれはなんだったんだろう。
塾は普通に終わり、遅い時間だったのでどちらの親も迎えにきてくれて、一人で帰らなくて済んだのが本当によかった。
その日は普通にお風呂に入り、ネット動画を見て、眠くなって寝た。
翌日、友達は学校に来なかった。
そういえば、昨日はSNSのメッセージが来なかった。
毎日寝るまでメッセージのやりとりをする毎日だったのに。
おかしい。
どうして私、昨日は何も送らなかったんだろう。
先生に友達が休みの理由を聞いてみた。
先生はお家の事情で、おばあちゃんの家に行くことになったと教えてくれた。
何それ、何も聞いてない。
友達とは、それっきりだった。
家に様子を見にいっても誰もいなくて、SNSにメッセージを入れても既読が付くことはなかった。
そのまま年が経ち、私は中学生になり、
ある時、寝る前に彼女の事を思い出して、
スマホの画面を開いた。
やはり既読がついていない。
このスマホもそろそろ機種変かな、と思いながら画面を切り替えようとしたとき、
目の前で既読が付いた。
タワマンってなんだろ?
所謂タワーマンションの事かな?夕方でもないのに工事終わってるなんて、しかも一階だけで階段ないって、建築途中放置かな?
友達と思ってたイマジナリかな?