塗りたくられた家族写真
投稿者:ぴ (414)
私は思わず、「それ誰?」と聞いてしまいました。写真に写っていた子はどう見てもまだ小さな子供に見えました。
昔の私や弟よりもさらに小さくて、推定2~3歳くらいの子供のようでした。
母は一旦誤魔化そうとしたけど、言い訳しきれないと観念したのでしょう。私と弟にこんな話をし始めたのです。
母は若い頃に父とは違う別の人の子を身ごもったらしいです。
その人とは学校を卒業したら籍を入れる約束をしたのですが、母が卒業するのを待たず行方を眩ましました。
それから母は母一人で子供を育てていましたが、その子は2歳のときに運悪く病死して、この世を去ったらしかったです。
それから母はお見合いで私の父と出会い、その後再婚しました。
それから母は私と弟を順に授かり幸せに暮らしたのですが、いつからか写真におかしなものが写るようになりました。
それというのが先ほども見た4人の幸せそうな家族写真をに写る幽霊です。
その子はいつも悲しそうな顔でこっちを羨ましそうに見ており、その写真が母には「幸せにしてなるものか」と思っているように見えたそうです。
それから母はその子が写真に写る度にペンでぐちゃぐちゃに塗りたくったと聞きます。
私が物心ついてから、母は写真を嫌っていました。
家族で写真を撮るときも、ほとんど写真に写ろうとしなかったです。
単に写真が嫌いなんだと私は思っていたのですが、それが違っていたことを初めて気が付きました。
そのようなことがあったのかと私はその日に初めて知ったのです。
母の話を聞いて私はなんとなく、私の兄にあたるその子が可哀そうに思いました。
写真にあのようなものが毎回写るのは怖いに決まっています。
だけど、そうやって自分だけ除け者にされるなんて、それはそれは兄は寂しかったんじゃないでしょうか。
弟も同じことを思ったのかもしれません。「可哀想」と言いました。
その日は父にもこの話をしました。母は父には子供がいたことは話したことがあるそうですが、写真に心霊写真が写ることまでは教えていないようでした。
それほど母が必死に隠してきたのかもしれません。
それからは私たちの説得もあって、たまに家族で写真を撮るようになりました。
毎回写ったわけではありませんが、度々あの男の子が写真に写るようになりました。
本当は怖かったのですけど、その顔の寂しそうな様子が気になって、私はそれから何度も何度も家族写真を撮るようになりました。
そして撮った時に写った心霊写真をマジックで消したりせず、アルバムに綴じるようになりました。
そうしていたら次第に兄の幽霊が写真に写ることが減っていって、いつしか4人で写真を撮っても心霊写真じゃなくなりました。
あれから数年経ちますが、あのときに撮影された写真は今もアルバムに保管してあります。
怖いと思ったときもあったけど、次第に写りこんだ顔は寂しげじゃなくなっていき、怖さもどんどん減っていきました。
もしかしたら兄は私たちに受け入れられたことで、今は成仏できたのかもしれません。そう思いたいし、そうだったらいいなと思っています。
慎んでご冥福をお祈りします。
あなたのお母さんが我が子を忘れてはいけないのです。
きっと見守ってくれていますよ。