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ヒトコワ

風見鶏さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

願い事
短編 2022/07/19 02:04 3,571view
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母の友達のAさんから聞いた話です。

Aさん宅の斜め向かいに、ある一家が引っ越してきたそうです。

旦那さんは背が高くイケメンで、旦那さんに良く似たとても可愛い娘さんがいるそうです。
しかし、奥さんはと言うと暗い感じで髪の毛なんかもボサボサ。どう見ても不釣り合いな家族といった感じだったそうです。

Aさんは「他所の事だし」と思い、特に何か詮索する事はせず過ごす事にしました。

そのうち御近所という事もあり、顔を合わせる事が増えてきて、奥さんとちょくちょく話すようになりました。
奥さんの名前はヒトミさんと言うらしく、話してみると外見とは裏腹に、いつもニコニコしていて言葉遣いも丁寧で嫌な印象は全く感じなかったそうです。

Aさんは「きっとこういうところに旦那さんは惹かれたんだな。人は見た目で判断しちゃいけないな。」と反省したそうです。

仲良くなるうちにお茶でも、という事になったのですが、ヒトミさんは「まだ片付いていないから」と言うので、Aさんの家に招く事にしました。

歳も近い事もあり話が合い盛り上がっていると、ヒトミさんが少し言いにくそうにAさんに言ってきたそうです。

「Aさんは、願い事って叶うと思う?」

Aさんはあまりそういった類のものは信じていないし、自分自身今まで叶った覚えがなかったので、

「ん〜、叶わないかなぁ〜。」

と言うと、ヒトミさんは俯き少し黙った後ポツリポツリと話し始めました。

「願い事ってね、みんなするじゃない?でもね、叶わない場合が多いと思うの。でもそれには理由があってね。何か代償を払わなきゃ、願い事って叶わないのよ。」

そう言われた瞬間、何か嫌な感じが首筋に走り鳥肌が立ったそうです。

急に雰囲気が変わったヒトミさんに対し、Aさんが何も言えず固まっていると、

「ほら、私ってこういう見た目じゃない?だから周りからあまり仲良くしてもらう事ってなくって、、、。でも、Aさんはそんな事気にしないでとても親切にしてくれるし。だから教えてあげたいの。」

と、Aさんの方を見る事なく、ただ俯いて話し続けるヒトミさんに対して、断るタイミングも言葉も見つからなかったAさんは、黙ってそれを聞くしかなかったそうです。

ヒトミさんが言うには、代償が大きければ大きいほど願いは叶いやすくなるそうで、ちゃんとした作法(儀式)のようなものもあるとの事でした。

「私ってね、元はこんな見た目じゃなかったの。有名ではないけれどモデルの様な事もしてたし、自分で言うのも何だけど結構モテたの。」

心の中で「これ以上は聞いちゃいけない気がする」と思いながらも言葉を発する事が出来ず固まるAさんの事など見えていないかのように、ヒトミさんは話し続けました。

「でもね、あの人だけは振り向いてくれなかったの。それにあんな女と一緒になって子供まで作って、、、。だからね、お願いをする事にしたの。沢山代償を払って、やっと。やっと手に入れたの。だからもう誰にも渡さない。絶対に。」

そう言いヒトミさんは漸く顔を上げたと思うと、目を見開きニヤァっと口を開け、

「だから、お願いね。Aさん。」

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