亡くなった祖父との最後のお別れ
投稿者:銀 (1)
これは私が体験した不思議な話です。
祖父が亡くなったのは私が中学生の時でした。
人生で初めて参列した葬儀は、この祖父の葬儀だったので15年経った今でもはっきりと覚えています。
火葬前、棺へお花を手向けた際、祖父の顔に触れました。亡くなった人はこんなにも冷たいのだと知りました。
祖父は亡くなる5年ほど前から糖尿病を患い、同居していた祖母も面倒が見切れないため、長らく施設に入っていました。
最期の数ヶ月は病状が悪化し入院中に認知症も患いました。その後、入院先の病院で静かに息を引き取り、私自身が最期を看取ることはありませんでした。
私と祖父との思い出は多いとは言えず、寡黙な祖父でしたのでお喋りを楽しむというよりは、一緒に黙々と将棋をして遊んだ思い出が残っています。
日々の生活で忙殺される中、祖父を思い出すこともあまりなくなってきていたのは、私が社会人になってから数年経った頃です。
今まで幽霊の一つも見たことがなかった私でしたが、夢の中に突然祖父が現れました。
そこは祖父の家でした。一軒家の庭に面した外廊下の一番奥に祖父が正座をして座っていました。
表情はとても穏やかで、廊下の手前に立っている私を見てにっこりと微笑んでいました。
「おじいちゃん!」と私は叫びながら急いで祖父に駆け寄りました。
一瞬夢か現実なのか分からず、祖父はまだ生きていたんだという錯覚に陥りました。
私は夢の中の祖父に駆け寄ってその手を両手で強く握りしめようとしました。
ですが、祖父の手に触れた瞬間、祖父の手がゾッとするほど冷たかったのです。背筋が凍るとはこのことでした。
そして、「あ…」と心の中で悟りました。そうだ、祖父はもう何年も前に亡くなっていたのだと。
祖父が亡くなっていると夢の中で気付いたと同時に私は目を覚ましました。
目を覚ました私の目は涙でいっぱいに溢れていました。
こんな経験は初めてのことだったので、すぐに両親に話したのです。
両親も不思議だねと言って私の話を聞いてくれました。
それから1週間ほど経った頃でしょうか、一人暮らしをしている祖母から電話がかかってきました。
今までずっと祖母が持っていた祖父のお骨を業者に頼んで海へ撒いたと報告がありました。
そして驚くことに、お骨を海に撒いた日がちょうど私があの不思議な夢を見た日と同じだったのです。
夢の中で触れた祖父の手が恐ろしく冷たかったのは、海の冷たさだったのでしょうか。
あまりの偶然に私の背中にはゾクゾクした感覚が走りました。
ですが祖父は最後の最後に私の枕元へ来てお別れを言いに来てくれたのかなと、温かい気持ちになりました。
あの不思議な夢を見てからすでに数年が経ちましたが、あれから祖父が夢の中で私に会いに来たことは一度もありません。
やはりあれが最期のお別れだったのだと思っています。
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