夕方5時の女の子
投稿者:SN22 (1)
そんな日々を過ごしているとあ母さんに明日お家に帰ると言われました。慌てて女の子に会うため夕方にいつもの場所に待っているとガサガサと草の音が聞こえ女の子が塀から飛び降りてきました。
この子はこれから一人で遊ばないといけないのかと思うとなかなか言い出せませんでした。
ヒグラシの鳴き声が聞こえ、もう帰らないといけない夕暮れ時に女の子に意を決して言いました。
「ウチ明日フェリーで帰るねん…もう当分会えやん」
少したって女の子が「そうなんだ」とだけつぶやきました。その声がとっても寂しそうで胸が潰されそうだったのを覚えています。
それから月日が経ち、なかなか行く機会もなくなり中学生の時にフェリーでおばあちゃんの時に行った時には私自身、坂の下の女の子の事もすっかり忘れていました。
それから成人し自分の実家でゴロゴロしている時におばあちゃんが遊びに来る事になりました。
自分の兄も結婚して子供がいたので、おばあちゃんが来るなら子供を連れて実家に顔を出すということになり当日は宴会状態になりワイワイと楽しくやっている時にふと思いだしました。
「なぁなぁ、お兄ちゃん。ウチおばあちゃんとこずっと一人やったやん。お兄ちゃんに女の子と一緒に遊んでる事言うてたよな」と聞くと。
「はっ?俺しらんで」
「いやいや、めちゃ言うたやん。」
まぁ~小学生やったしなとなり、母親に聞きました。
「お母さん、ウチと一緒に遊んでた子いてたやん。あの子知ってる子?」
すると母親は
「あんたいっつも一人やったよ」
いやいやそんなわけないやんと笑いながら、ご飯を食べているおばあちゃんに聞きました。
「おばあちゃんの家の近所に女の子いてるよね?小学3年の時の夏休みに女の子と遊んでてん。家はあっちって指さしてたけど」地図でおばあちゃんに確認するとおばあちゃんはこう言いました。
「下の家はぜんぶ誰も住んでないし、女の子はあんた以外誰もいなかったよ。だから遊び相手がいないから可哀想と思ってたんよ」
「えっ?じゃあ…あの子は?」
「いつ迎えに行ってもあんた一人で遊んでたで」と母親がキッチンから言いました。
今考えればほんとに変だった。自分の事は話さなかった女の子、すごい高さの塀から飛び降りてきた女の子。いつも同じ服を来た女の子。
そういえば…お母さんが迎えにきたときにはいつの間にかいなくなっていたような気がします。
ヒグラシが鳴き出すと女の子を思いだします。
「どうして一人で遊んでいるの?」と言ってくれた名前も教えてくれなかった女の子を…。
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