夕方5時の女の子
投稿者:SN22 (1)
小学生3年の頃夏休みにフェリーでおばあちゃんの家に泊まりに行った時の話です。
おばあちゃんの家はとにかく山奥で、田んぼと畑、山に囲まれており、家の坂の下には稲荷神社があって小川が流れていました。
家は本当に少なくて道も砂利道、信号機などない夏休みにはもってこいの田舎の家でした。風もよく入り家の中は夏なのにとても涼しかったのを覚えています。
夜は真っ暗になり稲荷神社まで子供だけで怖い怖いと言いながら探検しに行ったりもしました。
とにかく田舎なので夏休みになっても子供は隣のお兄ちゃん3人と自分の兄、いとこの2人しかいませんでした。
おばあちゃんの家はとても大好きで田舎探検も好きでした。
でも自分以外女の子はいなくて、気づけば一人だけ置いてきぼりや遊ぼうと思っても男の子の輪に入りにくく、いつもお母さんや近所の大人の人にくっついていました。
とにかく気づけば一人なので楽しい半分寂しかったのも覚えています。お兄ちゃんと遊んでおいでと言われるけれど結局最後は一人になるのが分かっていたので嫌だった記憶があります。
夕方、坂の下に行き一人でチョークで絵を買いたり丸を書いては一人でケンケンパなどをして遊んでいました。
そんな時にどこからか女の子が声をかけてくれました。
「どうして一人で遊んでいるの?」声をするほうを見渡しても誰もいません。
「誰も遊んでくれへんねん」なぜか普通に答えている自分にビックリしながら話しかけました。
午後5時の放送と音楽が流れ出しました。夏なのでまだまだ明るい時間帯です。
「誰もいないの?」女の子の声が聞こえます。
「お兄ちゃんもいとこの子もいるし隣の子もいるよ。っでも女の子はウチだけやねん」
少し泣きそうなった時に「ちょっと待ってて」と声が聞こえたかと思うと廃墟のお家の裏庭から小学生では絶対登れない高さのコンクリートの塀を女の子が飛び降りてきました。
「何して遊ぶ?」白い服をきた活発そうなおかっぱの女の子でした。
女の子がいた事がとても嬉しくて「ケンケンパしたい!」とすぐ遊ぶ事に。お母さんが呼びにくるまでキャッキャッ遊んでいたのを覚えています。
一緒に絵を書いて、雲をみれば何に見えるか当てっこしたりとにかく一緒に遊ぶのが凄く楽しくてその子に聞きました。
「明日も一緒に遊んでくれる?」その子はにこやかに「うん遊ぼ!また同じ時間に来るね」
その次の朝は蝉の声を聞きながら夏休みの宿題をして、お昼にはソワソワ。夕方5時前に一人で坂の下で待っているとガサガサと草の音が。またもや高い塀から女の子が飛んで降りてきました。
「危ないよ。ケガするよ」女の子に駆け寄りそう言うと「平気だよ」ニコニコと笑って今日は何して遊ぶ?と言われ二人でケンケンパやじゃんけんなどして遊びました。
そんな日が何日か続き女の子に聞いてみました。
「どうしてそこから来るの?」女の子は答えません。「お家はどこ?」女の子は指を指してあっちの方と言いました。
「夏休みだけ来てるの?ウチは夏休みだけだよ。おばあちゃんの家にいてるんだ」と言うとちがうよとだけ女の子は言いました。なんだか子供ながら聞いてはいけない気がして、そっかだけ言いまた一緒に遊びだしました。
いつも一人だったのですが、その日はみんなで遊んでいました。5時の放送が流れても音楽が流れてきても女の子は来ませんでした。
次の日、一人で遊んでいると女の子が塀から飛び降りてきました。
どうしてこなかったのか聞いてみると「昨日は来れなかった」と答えました。
女の子に朝から遊びたいと言っても朝はダメだと言われ帰り際にまた明日の夕方と言われます。
朝一人で坂の下で待っていてもやっぱり女の子は現れませんでした。
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