手を振る人
投稿者:ぴ (414)
短編
2022/06/23
15:14
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私は子供のときに、強くこびりついている記憶があります。
それは赤い車に乗った人が手を振っている姿なのです。
それは本当に頻繁にあり、デパートの駐車場や、学校の門の前、タバコ屋さんの近くでも何度も目撃しました。
警戒心が強かった私は手を振り返すことはなかったのですが、その人はそれでもずっと私に手を振っていました。
子供心にあの人は誰なんだろうと思っていました。でもなぜか人に言いたくなくて、話しはしなかったのです。
高校を卒業してから、私は父の昔のアルバムを見せてもらいました。
私に母はいません。私は父に男手一つで育てられ、ここまで育ちました。
そして父はこれまで何を聞いても母のことは教えてくれなかったです。
私が母の真相を知ったのはこのアルバムを見た日でした。
私は子供の頃にこびりついて離れなかった赤い車を父のアルバムで見ました。
じっと見ていると父が話してくれました。
この車の持ち主は私の母であり、そして私が生まれて間もなく、男を作って家を出て行ったと聞きました。衝撃的事実でした。
私が「生きてるの?」と聞いたら父は男と逃げて数週間後に事故で亡くなったと言いました。
昔私がよく見た赤い車の手を振る女性は今はもういない母だったのではないでしょうか。
もしかしたら母も残した私たちのことが気になって、見に来ていたのかもしれません。
家庭を捨てて男と逃げたことは許せないけど、それでもそう思っていたいと思いました。
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