おじいちゃんの手
投稿者:ぴ (414)
私は昔死んだおじいちゃんに一度会ったことがあります。
おじいちゃんはとても孫が大好きな人でした。孫の私のことを思いっきり可愛がってくれたし、怒られた記憶もほとんどありません。
そんなおじいちゃんですが、肺の病気を患い早くに亡くなりました。けれどその3年後に私はおじいちゃんに確かに会ったのです。
お墓参りした帰り道に、好奇心旺盛だった私は何か動く動物を見つけて脇道にそれてしまいました。
わき道をずんずん進んでいった私は何かにぶつかりました。
はたっと気づいたらおじいちゃんの背中でした。
おじいちゃんは「おい、こっちじゃないぞ!」と私に言って、大きな手で私の手を引いてくれました。
いろいろ私に話しかけてくれたけど、内容まではよく覚えていません。ただおじいちゃんは私を見て嬉しそうに笑っていたと思います。
おじいちゃんと手をつないで歩いていると、遠くから私を呼ぶ声がしました。気づいたらいなくなっていた私を慌てて探しに来た父の声です。
私はおじいちゃんの手を引きましたが、おじいちゃんはなぜかそれ以上進まずに、私に「バイバイ」と手を振り、森の奥のほうへ引き返していったのです。
その後すぐに私を見つけた父に抱きかかえられて、家に帰りました。きっと私はあの日おじいちゃんに助けてもらったのでしょう。
わき道のその先は崖のようなところになっていて危険だったそうです。おじいちゃんがいたから私は無傷で無事に帰ってこられました。
後にも先にもこの日だけですが、私はこの日死んだおじいちゃんに会いました。
おじいちゃんの少ししわがれたでも大きな手を今も思い出して、温かい気持ちになります。
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