古い井戸からの声
投稿者:湊 (22)
短編
2022/05/17
20:42
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田舎のおばあちゃんちには古い井戸があります。もう涸れてしまっていて使えないのですが、本体はそのままになっているのです。
もちろん人が落ちてしまったら大変なので普段は蓋をしています。
ところが、私が小さかった頃は従兄弟たちと一緒に蓋を空けて遊んでいたことがあるのです。
夕方、だんだんと日が暮れてきました。なんとなくひんやりとした空気の中、井戸の蓋を空けたところ、微かに井戸の中から物音が聞こえてきたのです。「あああああ…」という女性の声が聞こえてきました。
もしかしたら、本当に人が落ちているのかもしれないと思い、すぐに大人たちに相談したことを覚えています。
しかし、誰も落ちていませんでした。大人たちが捜索しても人が落ちている痕跡はなかったのです。
そして、これが不思議なところなのですが、大人たちには女性の声が聞こえませんでした。
聞こえているのは私と同年代の従兄弟だけです。
従兄弟の中でも少し年上の子たちは聞こえないと言っていました。
結局、その後どうなったのか分かりませんが、大人になってからあの時のことを振り返ってみると不思議な体験だったなと思っています。
幽霊だったのか、空耳だったのか。特に不思議なのは声が聞こえたのは私だけではなかったという点です。
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