逆さまになった幻の車

免許を１８歳で取得したら、ドライブして、よく肝試しとかしがちですよね。
私もしました。（〇十年前になりますが）

田舎が地元の友達が、「俺の地元に廃墟あるから行かない？」から始まり、
お決まりのメンバーで行くのです。
墓地などには行ったことがありますが、怪奇現象や恐怖体験は未経験な私。
建物の廃墟は初めて行くジャンルでした。
どうせ暗いだけで何もないだろうと思っていましたが、広い敷地に工場と思われる建物の廃墟がありました。
建物入り口にたどり着くまで、結構距離があり、草木が生い茂っていましたが、何とか軽自動車１台通れそうなので、
このまま車で行こうということになり、ガタガタ道を走っていると…真っ逆さまになった車で道路はふさがれていました。
錆びていて、窓なんかも割れていて、中もライトで照らすと枯れ葉やクモの巣、埃だらけです。どう見ても壊れて動かない車。
なぜ逆さまにして放置してあるのかと少し謎に思いました。

このままでは、車は通れないのでそこから歩いて廃墟まで行くことになりました。
３人で行きましたが、メンバーのうち誰も霊感といえるものは少しも無かったはずです。
入口につき、急に友達１人が「窓！窓！」と言い出したので、「またまたぁ‥」と窓がある方を見てみると‥

‥何も見えません。（すいません‥）
入口から廃墟に入りましたが、入ってすぐのところで、棚やロッカーのような物で溢れていました。
明らかに誰かが不法侵入を防ぐために置いたようになっていて、結局奥まで進むことはできません。

「なあーんだ、帰ろっかー」と振り向いて、もと来た道を３人で歩いて戻りました。
車のある所まで、数分でしょうか。
「窓！」と叫んでいた友達は、あれから一言も発さず無言です。
そして車の場所に近づくにつれて、「頭が痛い」と言い始めました。
「やばい絶対なんかあるわ」

「またまたぁ」
のくだりをしているところで、車が見えてきました。

「？」
車見えるね。こっから。私たちの乗ってきた軽自動車が。

「‥え」
「なくない？」

逆さまになった車が消えていました。
私たちが廃墟にいた時間は、２０分もいなかったと思います。
そして、私たちの乗ってきた軽自動車は、逆さ車の前にピッタリと停めていたので、他の車やレッカー車などの大型車が
入る隙も無ければ、道には、逆さ車が引きずられたような形跡もありません。
まさに消えたという感覚でした。
それからは、３人とも無言で車に駆け込みバックで暴走しながら公道まで戻ったと思いますが、ほとんど記憶はありません。