100周年のお祝いで
投稿者:18金 (5)
私が小学生だった頃ですから、かなり昔の話です。
私がその頃通っていた小学校は古い学校でした。
田舎の学校でしたが、そこそこ大きな校舎は、山の中腹を切り崩して作られ、体育館と校庭は校舎のさらに上の山を切り崩して平らにして整地していました。
教室の目の前は山の崖が見え、校庭はその崖の上に作られていました。
校舎とその上に作られた校庭の間にある崖は斜面が急で、生徒が崖に生えている草を掴みながら何とかしてよじ登ることはできますが、歩く事などできる角度ではありません。
校庭の高さは校舎の屋根より高い場所でした。
そんな小学校も100周年を迎えました。
100周年記念行事は、小学校の100年間の歴史に関係する方々を招待して執り行われました。
歴代の先生や卒業生、町の関係者など。生徒たちは体育館で楽器の演奏をする事になり、この100周年を盛り上げようと楽器演奏の練習を繰り返しました。
人生の中で何かの100周年のお祝いに参加する事など未だかつてありません。
当時小学生の私もそれは感じており、緊張しながら当日の朝を迎えました。
しかし私は当日の朝熱を出してしまい、残念ながら休む事になり、緊張しながらも楽しみにしていた自分の学校の100周年行事に参加することはできなくなってしまいました。
後で聞いた話です。
100周年行事が無事全て終わり、あたりはもう夕方になり、一安心した先生や関係者が教室に集まり談笑していた時です。
ひとりが窓の外の左右に広がる崖を見ると、人が急な崖を歩いていたそうです。
急斜面の崖は人がまっすぐ立つこともできないほどですが、その人は横に滑るようにスーと歩いていたそうです。
明らかに生きている人間ができる動きではなかったそうです。
その光景をその場にいた何人もが見ていたそうです。
小学校の校舎と校庭を作るときは山を切り崩して作られており、その工事にはかなりの人数が関わったそうです。
その中には切り崩した山から出てきた大きな岩の下敷きになって亡くなった方もいたそうです。
崖をスーットと横切る人影を見た人たちは、怖いという気持ちはなく、「学校を作る工事の時に亡くなった人が何人かいたみたいだし、その人たちも100周年のお祝いに出てきてくれたんじゃあないかな」と、自分たちよりずっと昔に、小学校建設のために力を尽くし亡くなった人たちを思い、あたたかい気持ちになったそうです。
私が直接体験した話ではありませんが、怖くない心霊体験です。
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