バス停の男の子
投稿者:すもも (10)
その晩、私は風呂上がりにバス停で体験した事を父に話しました。
最初は白昼夢だろうと笑って聞いていた父でしたが、次第に神妙な顔つきになり、ポンと思い出したかのように人差し指を立ててこう言いました。
「そういえば親父から聞いたことあるんだけど、あのバス停が建つ一帯で空襲があったそうだ。その時何人か子供が犠牲になったって聞いたから、もしかしたら本当にそのオバケだったりしてな、ハハハ」
父はオバケが居たら会ってみたいと言うようなお気楽な性格なので、楽しそうに語らっていました。
父に言われて思い返せば、確かにあの男の子恰好は学生帽からして戦時中の学生だったのかもしれません。
ただ、私が見た男の子がそのオバケだとして、バスに並走したり、口の中から他の子供の顔が覗いてきたり、挙句何かを口ずさんでいたのは何だったのでしょう。
その男の子の悪戯でただ私を驚かしただけだといいのですが、何か重要な事を伝えようとしていたとすれば、窓ガラスを叩きつけてきた様子からあまり好ましいものではなさそうです。
その日以来、あのバス停を活用する際はなるべく一人で近寄らず、友達と訪れるように心掛けています。
土砂降りの時はトラウマが蘇るので、母に連絡して車で迎えに来てもらうか、最悪、歩いて一本先にあるバス停へ向かいました。
なので、中学を卒業するまで男の子と遭遇することはなかったし、卒業後は近寄ることさえなかったので、私の体験はそれ以上進展がありません。
これからの人生あの男の子に遭遇しないよう、ただ願うばかりです。
こういうストレートな怪談好き