一泊二日『洒落怖』体験ツアー
投稿者:らん (1)
蔵の中は雑多で、宝が何かわからない宝探しは骨が折れそうだ…。と思った矢先。
「愛、舞、多分、これ。」
一人黙々と作業していた美衣が何かを見つけたらしい。こいつ、そういえばオカルト好きだったな。
「何…これ。紙?」
「文字だよね多分。読めない…。」
美衣が差し出した紙には、時代劇に出てくるような文字が赤黒く書かれていた。
文字は一行ずつぐるりと円状に配置されていて、どこを上にしても読めるようになっている。
「何かはわからないけれど、これが入ってた箱にもう一枚紙があって、『母屋にお越しください』って。」
なるほど、井伊さんが言っていた曰く付きの『あるもの』はこの紙で違いないだろう。
「とりあえず、母家に戻ろうか。」
「そうだね!いや〜、ワクワクしてきたね!」
「呪い、何かしらね。楽しみだわ。」
美衣の興味はややズレているような気もする。
「井伊さん、戻りました!」
「あら、お早いお戻りですね。血判状、無事見つけられたようですね。」
「血判状っていうんですね。これ。名前からして、血を使った書面か何かですか?」
「その通りです。ちなみに、手漉きの和紙を使って、数百年立っているよう加工を施しています。さすがに人の血は使っていませんけどね。詳しくは明日、女将から説明差し上げますね。」
「だからこんなにリアルなんだ。すごい。」
「ありがとうございます。さて、この後は…。」
「呪われた私たちに恐ろしい夜が待っている。ですよね?」
「ええ。その通りでございます。恐ろしい夜と言いましても、美味しいご飯と大きなお風呂はご用意しておりますので、ご安心ください。」
井伊さんの言葉通り、料理は素晴らしいものだった。近隣の川で釣れた鮎の塩焼きに、畑で採れた夏野菜のサラダ。そして抜群に美味しいのがフキなどの夏の山菜の天ぷら。白米も艶やかだ。派手ではないが、旬の具材をふんだんに使った上、丁寧に下拵えされているおかげで癖もなく、箸が止まらない。
「恐ろしい夜って何が起きるのかしらね。」
「美衣、気になる?」
「そりゃね。流石に身の危険は無いだろうけど。」
「私も気になるな。お化けとか苦手なんだよね。」
「安心しなって愛。もしお化けが出たら私が追い払ってあげるよ。美味しいご飯で力一杯だしね!」
「舞、頼りになるかな。」
「ひどいっ。って苦あっ!?」
「舞?」
「こ、この天ぷら…人生で食べたものの中で一番苦い…。」
「ええ?私のは美味しいけど。」
「あら、舞さんに当たりましたか。」
「井伊さん。」
「舞さん。申し訳ありません。そちらはニガダケと言いまして、夏に採れるタケノコの天ぷらでございます。アク抜きをすれば非常に美味しいもののですが、『呪い』として一つだけアク抜きしていないものを入れておいたのです。」
「なるほど。舞、しっかり守ってくれたわね。ありがとう。」
「美衣〜。ひどいよ…。」
「あの、井伊さん。他にも『呪い』はあるんですか?」
「ええ。この夜にいくつか用意させてございます。と申しましてもこのような悪戯程度のものばかりですが。」
「なるほど。舞、今後も任せた。」
「舞、期待してる。」
「舞さん、良いリアクション、期待してます。」
「皆ひどい!!」
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