山から聞こえる異界の声
投稿者:庸一朗 (3)
長編
2022/03/27
00:52
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急に風が吹いて木の葉がザワザワと揺れている。ポトン、頭の上に何かが落ちて赤と白の丸いものが転がった。「パパ、これ何」長男が拾い上げたそれは釣りに使う浮きのように見えた。
その時、ふっと昔のあの出来事を思い出した。風の音の合間に群衆のさざめきが聞こえる。「あ~あ~あ…」急にまたあの声が近づいてきた。
池の向こう木々の間から黒い霧のような影が迫ってくる。子の手から浮きを払うと何も聞こえていないし見えていない涼しい顔をしてその場をすぐに立ち去った。とぎれとぎれに家並みが見えてくると、その声も聞こえなくなっていた。
あの声と影の主は何だったのだろう?群衆が近づいてくるようなそんな気配がした。意味までは聞き取れなかったが確かに人がゆっくりと話しているようなそんな声がした。
家に帰ると大学を卒業以来、ずっと両親と共に実家を管理してくれている妹が聞いてきた。
「遊ぶとこあった?」散歩先を教えると「山の近くまで行ったの?池なんか子供は危ないじゃない」「変な声も聞こえるし」変な声、どうやら妹もあの声を聞いたことがあるらしい。
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こういう土地って実はたくさんあるんだろうな