夜中の大浴場にて
投稿者:ちゃーのすけ (1)
私は焦りながらも「のぞき」だと思っていたので、その旨をフロントの係の人に伝えました。
奥から出てきたフロントの人も私と母のただならぬ雰囲気に顔色が変わり、
「警察と警備をすぐ呼びます!そのままロビーでお待ち下さい!」と言われました。
ロビーでコーヒーとお茶を出され、まだドキドキしている心臓を落ち着かせる為に飲みたくもない飲み物に口を付けました。
数分後に警備の人が来て、大浴場周辺の見回りをしながら警察の到着を待ちます、と伝えられました。
その数分後、男性と女性の警察官3名が到着し、詳しく事情を聞かれました。
また、大浴場へと戻り、穴が開いて板が垂れ下がっている天井に私が指を差し、現場検証と写真を撮られました。
その後「部屋に戻って下さい」と言われ、言われるがまま部屋へと戻りました。
時間はもう3時を超えており、少しでも寝ないといけないけど、私も母も神経が高ぶって寝られない状態でした。
その時部屋の電話が「ジリリン!!」と鳴り、私も母もビクッ!となりましたが、私が急いで受話器を取ると、フロントからの電話でした。
要件は「申し訳ないのですが、警察の方から説明があるそうですので、もう一度ロビーへと来て下さいませんか」と言うことでした。
説明?と思いながらも、このままでは腑に落ちないので私と母はロビーへと向かいました。
ロビーへ行くとフロントの方、警備の方、警察官勢揃いで迎えられ、ソファへ座るように促されました。
そして、こう聞かれました。
「靴の底はどういう形だったか、など絵に書けますか?」
鮮明に覚えていた私は、はい書けますと言って、フロントの方が用意した紙とペンに靴底の模様を書きました。(丸が2つ3つ程しかない少し変わった靴底の模様でした)
その絵を見て皆が無言になりました。
そして婦人警官の方が口を開き、調べた事を話して下さいました。
「犯人を捕まえようと周辺を見たけど誰もいませんでした。温泉旅館の周りには高い塀があり、時間的に登って逃げる事は出来ないと考えました。その他のルートは防犯カメラがあるのでそれも確認しましたが、誰も映っておらず、それなら抜けた天井の上に犯人がまだ潜んでいるんじゃないのかって話になりまして、」
「抜けた天井に脚立持って行って天井を剥がしたら潜んでいる犯人を捕まえられるんじゃないかって…行ったんですけどね」
「抜けた天井の上にもう1つ天井がある形状なんですね、確認した所、」
「落ち着いて聞いて下さいね..。抜けた天井とその上の天井ね、15センチしか無かったんですよね。人も入れないし、ましてや立てないぐらいのスペースだったんです…。でも嘘とは思えないくらい鮮明なお話なんで、こちらも少し動揺しておりまして…」
私は全身に鳥肌が立ち、とっさに母の顔を見ると母も凄い形相で私を見ていました。
納得いかなかった私は、15センチ?そんな訳ないです!再度大浴場に行って確認したいのですが!と食い下がりましたが、「すみません、もう修復に入っているので入れないんです」
の一点張りで入れて貰えませんでした。
そのまま謝罪も、納得も何もないまま部屋へとただただ返され、結局朝まで寝付けませんでした。
朝から祖父母のお墓参りをして、疲弊していた母と私は、観光やお土産を買う予定も切り上げ、早々に帰宅する事にしました。
その後、家のお風呂や近所の銭湯に行っても、天井をふと見ると冷や汗と動悸が止まらないと言う症状に5年ほど悩まされましたが、今はすっかり良くなりました。
落ちのない話ではありますが、未だに私も母もあれはなんだったのか不明なままです。
ちなみに後で知った事ですが、そこの温泉旅館は幽霊旅館と言われているくらい、幽霊がよく目撃されているそうですが、私は幽霊ではなくのぞきだったと思っています。
覗きだったらガタガタ音をたてないんじゃないですか?
当日の朝は仕事だったんじゃないの?
人が入れないのは警察が確認したんじゃないのか?
覗き魔の生霊ですぞ…
女湯を覗きたい一心で物質化したのですじゃ…