雷のなる夕方に聞こえた声
投稿者:かなたかなた (2)
ふと思い出した不思議体験です。
3歳か4歳くらいの時、近所に住む友達と公園で遊んでいたら、急に天候が悪くなってゴロゴロと雷が鳴る音がしてきました。
いつも夕方の5時くらいまで遊んでいたのですが、やむを得ず解散することになり、みんな家へと帰って行きました。
私は補助輪付きの自転車で公園まで行っていたため、当時住んでいた団地の入り口近くの自転車置場へ急ぎました。
ゴロゴロと雷の音が大きくなり、一人ぼっちの私は大分慌てていたのだと思います。
自転車を倒してしまったりして、あちこち擦り傷だらけになってしまいました。
何とか重い自転車を立て直したはいいものの、今度は自転車のカギが閉まりません。転んだ際に少し歪んでしまったのかもしれません。
けれど、両親に自転車のカギを閉めないと盗まれてしまうと言われており、最近やっと自転車に乗る楽しさがわかってきた私はそのまま放置することもできずに何度もカギをガチャガチャと言わせました。
何とかカギの半分くらいが押し込めたところで、今度は雨が降ってきました。
ポツリポツリでしたが、すぐにでも大雨になりそうな雨の匂いがそこまでしていました。私はもう、ほとんど泣いていました。
自転車置場はちょうど団地のどの家からも死角になっており、ましてや、自分の家からも助けは来そうにありませんでした。
涙を堪えながら、何とか自転車のカギを押し込む私の耳に突然その声は聞こえました。
「落ち着いて、もうすぐ入るから」
その声が聞こえた途端、カギはスッと自転車に収まり、私は雨脚が強くなる中、家路につきました。
台所に立っていた母は、雷の音は聞こえても雨が降っているとは知らず濡れ鼠の私の姿を見て、驚いた様子でした。
優しいあの声は、誰だったのか、今でも思い出します。
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