予知と肝試しと悪寒の話
投稿者:赤壁二世 (13)
「何々?Mって霊感あんの?」
「あの橋ってそもそも子供の幽霊出たっけ?」
心霊好きなAはテンションが異様に高くなってMの話に食いつき、C子が橋の噂話のおさらいをする。
あの橋は俺の親世代も知っている古くからある橋で、何でも深夜一時に渓谷へ行くとあの橋から突き落とされて亡くなった女性の霊が現れる、という怪談話も親世代から語り継がれていた。
「橋の中央まで行くと女の霊に憑かれるって掲示板に書いてた」
付け足すようにC子がスマホで検索した情報を読み上げながら話し、更に自殺者が後を絶たないという重点をさらっと加える。
「アンタらマジでヤバいと思ったらすぐ連絡しなよ」
A姉から心配された俺達は素直に返事を返すが、俺は「電波繋がるのか?」なんて現実的な問題をぼんやりと考えていた。
ガソリンスタンドに到着した俺達はA姉の車を見送ると山道を登り始める。
と言っても、徒歩20分程度の曲がりくねった勾配を進めば街灯のない山中に突き抜け、その直線上に廃れて雰囲気のある陸橋がある。
それぞれの懐中電灯で足元を照らし、5人でわいわい話ながら歩いていると案外あっという間に到着した。
山中特有の湿り気のある冷たい感触と澄み切った空気、それが乗った微風が肌を刺激する。
渓谷の下に随分と水量のない河川があり、サラサラといった水音が静寂に包まれた山での唯一の音源だった。
「雰囲気はすげえな。ホントに幽霊出そうじゃね?」
Bが陸橋の支柱に近づいて谷底を覗き込む。
陸橋自体の高さはそれほどない。
目測だが、10メートルもないんじゃないかと思う。
Bの懐中電灯の明かりが脇の川の砂利を照らし、俺の視力でも小石を確かめられる距離感だった。
とりあえず橋の中央まで進むことにした。
今では誰も利用していないのがわかる劣化したままのアスファルトの上を歩き、ステンレス製なのか知らないが錆の入った手すりを伝っていく。
「そんな分かりやすい現象があるわけないか」
Aが落胆した肩を下げ、C子とD子は女子らしくキャッキャと記念写真を撮っていた。
それでBは陸橋から外れ、何処かに下へ降りられる階段がないか捜索し始めていた。
みんな自由だなと思いながら、俺は欄干から川を見下ろす。
その時、懐中電灯を乱雑に動かして一帯を照らしていたから定かではないが、一瞬だけ白っぽい人型を見たような気がした。
すぐに懐中電灯で人型がいた場所を照らしてみたが何もいないことに、俺は首を傾げただけに終わる。
「おーい、こっち階段ある。ボロいけど下行けそう」
Bの声に反応して俺達は下に向かう階段を降りる事になった。
まあ橋の近くに河川に降りられる階段がないといざというとき整備とか救助とかできないよなと俺は呑気に思っていた。
実際に下へ降りてみると殆ど山間に挟まれた小石だらけの干上がった川跡といった印象で、上を向くと陸橋の下部のシルエットが威圧感を放っている。
たまにそうゆう奴いてるよね!
ホモ系ではなく、預言者みたいなの。
アッー!