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心霊

アツシロさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

共同風呂場の黒い人影
短編 2021/12/06 22:36 891view

これは私が大学生の時の話です。当時、私は都内の借家で独り暮らしをしており、その借家は築十年以上経つ年季の入った古い借家でした。

古い借家はあちらこちらが老朽化しており、そのぶん家賃が安いのが貧乏学生の私にとっては救いだったのですが、冷暖房設備等はもちろんついておらず、夏は暑く冬は寒い上に古びた床板や階段は踏むとぎしぎしと気味の悪い音を立て、時には虫が這っている様子を見かけることもある様な少々不衛生な物件でした。

ある日のことです。大学を終え、その後、飲食店でのバイトをこなし帰宅した私は布団でぐっすりと眠っていました。
すると突然、なにやら奇妙な物音が聞こえてきて私は目を覚ましました。時計を見ると時刻は午後三時を示していました。

当時、私の住んでいた借家は二階建てで、私の部屋は一階にありました。奇妙な物音が聞こえてきたのは私の部屋と同じ一階にある共同利用のお風呂場のほうでした。
借家には私の他に三人の住民が住んでいたのですが、他の住民の就寝の妨げになるという理由から、お風呂場の利用は午後十時までと、大家さんによって決められていました。

私は不思議に思いながらも懐中電灯を手にお風呂場のほうへ行ってみることにしました。
お風呂場に近づくにつれて奇妙な物音は大きくなっていきます。

お風呂場に辿り着いた私はまず、電気を点けようとしましたが、何度押してもなぜか一向に電気が点きませんでした。

私は意を決してドアを開け懐中電灯でお風呂場の中を照らしました。すると懐中電灯の淡い光に照らされて狭い浴槽の中には何やら黒い人影の様なものが浮かび上がりました。人影は私のほうを振り向くとただ一言「助けて」と言いました。

私は無我夢中でお風呂場のドアを閉めると自分の部屋へと大急ぎで駆け戻りました。翌朝、大家さんに聞いた話では、昔、この借家に住んでいた八十代の女性が、誤ってお風呂場で溺れてしまったのだそうです。

それ以来、私はお風呂場という場所が苦手です。

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