誰か帰ってきた
投稿者:きぃ (4)
私が子供の頃、両親と祖父母、そして2つ年の離れた兄と暮らしていました。
祖父が体調を崩し入院していたある日、真夜中に電話が鳴りました。
電話は祖父が入院していた病院からでした。
内容は、祖父の病状が急に悪化し危篤状態というものでした。
急いで両親と祖母が祖父のいる病院へ行くこととなり、留守番を命じられた私と兄はリビングでテレビを見ていました。
子供ながらに大変なことが起こっていると理解していたのかもしれません。
そのまま2時間ほど経った頃でしょうか。兄が突然、「誰か帰ってきた!」と言うのです。
私たちが住んでいた家の玄関のドアにはベルがついており、ドアが開け閉めされたときに「カランカラン」と音が鳴るようになっていたのです。
兄はその音を聞いたようでした。
しかし、私は何も聞こえません。
兄と一緒に玄関に向かってもやはり誰もおらず、鍵も閉まったままです。
「あれ、気のせいだったのかな」と兄は言っていました。
再び私と兄はリビングでテレビを見始めました。
しかし、ほんの数分後、電話が鳴りました。
今度は気のせいではありません。一瞬の間、兄と顔を見合わせ、私が電話を取りました。
電話の相手は、父でした。
「さっき、おじいちゃんの死亡が確認された。これから一度帰るから」
そう、父は告げました。
祖父の死という衝撃と同時にさきほどの出来事を思い出しました。
さっきお兄ちゃんが聞いた音は、おじいちゃんが帰ってきた音だったんだ、と。
不思議な体験でしたが、音の正体が祖父だと思えば、怖い気持ちは全くありませんでした。
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