祖母から渡されたポリ袋とダムの底の話
投稿者:朱鳥 (2)
これは小学生の私と父に起こった、夏のある日の出来事です。
※当時のことを思い出しながら書いておりますので、読みにくいかもしれませんがご容赦ください。
父と私は休みの日によく池やダムに釣りに行っており、その日も車で1時間半程の山あいのダムに釣りに行く予定でした。
予定日の朝、父が所有している小型のカヌーを車に乗せていると、隣家に住んでいる祖母がやって来て、
「お盆の時期に水辺に行くのは感心せん」
「行くならこれを持って行き」
とジッパーつきの小さいポリ袋を渡されました。(中には一掴み程の塩と鷹の爪が2〜3本、煮干しが2〜3尾入っていました)
私は幼心ながら、信心深い祖母がまたよく分からないことを言っているな、程度にしか考えておりませんでしたが、祖母が安心するならと、父とそれを1つずつライフジャケットのポケットにしまい出発しました。
その日は風もなく、他の釣り人もおらず、水面も穏やかだったことを覚えています。
父の竿が大きくしなり出したのは、なかなかヒットがないことも相まって、私が少し眠気を感じていた時でした。
かなり強いヒットで父は思わず立ち上がったようでしたが、その瞬間、父の体はバランスを崩し、カヌーから水面に投げ出されてしまいました。
こんな事態になったのは初めてのことで、私は何もできず驚くばかりで、ライフジャケットを着ているはずの父が浮かんでくるのがやけに遅く感じられました。
なんとか父は自力でカヌーに戻り、その日はそのまま帰路に着くこととなりました。
幸い怪我もなく、竿などを失くしただけで済んだのですが、帰り道、車の中で父が転落した時のことをぽつぽつと話し始めました。
「さっきはビビらせんように黙っとったんやけど、竿がすごい力で下に引っ張られるんで焦ったわ……」
「竿は諦めたんやけど、釣具の他にばあちゃんから渡されたポリ袋もなくなっとる……」
更に父が言うには、今日行ったダムは建設のために村を沈めており、昔の建物が今も水底に残っているとのことでした。
もちろん当時の村人の協力を得て建設したものでしょうが、お盆で戻ってきた先祖達は水没した故郷に帰れず、水面で同行者を探していたのかもしれません……
父が私を怖がらせるために話を盛ったのかもしれませんが、父がカヌーから転落することなど後にも先にもこれきりでした。
水辺には霊が溜まりやすいと言います。皆さんもお盆の時期は十分気を付けてください。
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