北海道の綺麗な花畑の下で
投稿者:ミシェル (5)
私のおばあちゃんが昔住んでいた北海道の田舎での話です。
おばあちゃんが小さい頃住んでいた場所は、時代もあったのだとは思いますが田舎も田舎、外の人が来るような場所ではなかったそうです。
その場所は畑や田んぼに囲まれていた土地で、中でも花畑が綺麗だったんだとか。特に白くて丸くて小さくて、名前も知らない花がたくさん咲いていたそうです。
戦時中だったこともあり、満足に食事も出来ない日もあって、子供であろうと大人であろうと、そこで亡くなる人も多かったそうです。しかし人々はその花畑が咲き誇ってるのを見て、「自分たちはこんな綺麗な場所で生活出来ているのだから幸せだ」と思うようにしていたんだとか。
やがて月日が経ち、戦争も終わり、次第にそこも豊かになっていきました。水道や電気もしっかり通るようになり、道もでき、大きな街との交通の便も少しずつ整ってきたそうです。
すると少しずつその場所を離れ、別の場所へ住み始める人も多くなっていきました。
私のおばあちゃんも、その一人でした。見合い話を勧められ、その人と結婚し、北海道を離れることになりました。
おばあちゃんの旦那さんは博識で、おばあちゃんの住んでいる場所に咲き誇っている花を見て感心したそうです。「この花は前に見たことがある。でも、こんなに立派に咲いている所は見たことがない。きっと土壌にいい栄養があるんだろう」と。自分達の畑や田んぼを育てていくのもやっとだったのに、誰もこんな花畑に肥料をやる余裕なんてなかったはず。おばあちゃんは旦那さんの言葉に、一体どういうことだろうと思ったそうです。
やがておばあちゃんはその土地を離れ、旦那さんの住む場所で生活を始めました。嫁いでしばらくして、おばあちゃんの住んでいた場所が新しく開発されることになったそうです。そしてあの花畑も掘り起こされることになりました。
そして後日、おばあちゃんは知人からこんな話を聞いたそうです。
「あの花畑を掘り返したら、数え切れない程の人骨が出てきた」と。
その時おばあちゃんは旦那さんが「土壌に栄養がいっぱいある」と話していたことを思い出しました。
あの時まだ小さかったおばあちゃんは知らされていませんでしたが、あの場所で亡くなった人は、こっそりあの花畑の下に埋められていたそうです。それが花の栄養になっていたんだと。
あの頃はあの綺麗な花を見て「自分たちはこんな綺麗な場所で生活出来ているのだから幸せだ」なんて思っていたけど、果たして本当にそうだったのか……。
自分が死んだら火葬にされてCO2を排出するより、土の中で草花の肥料になりたい。