これは、私が中学生の頃の話。
この日も私は、いつも通り友達のRちゃんと学校へ向かっていた。
「おはよう! 今日もコロいるかな?」
Rちゃんは笑顔でそう話しかけてきた。
「コロ」とは、この先を10分ほど歩いたところにある家で飼われている犬のことだ。
古びたリードにつながれ、いつも庭にいる柴犬。私たちは勝手に名前をつけ、通りかかるたびに可愛がっていた。
それに、家主のおばあちゃんも優しくて、私たちはおばあちゃんのことも大好きだった。
日々勉強に追われる私たちにとって、そこは最高の癒やしだった。
放課後、私たちは今日もいつものようにコロのもとへ向かった。
学校から近いこともあり、すぐに着いた。
「コロ!」
そう言って駆け寄り、代わる代わる頭を撫でる。
私たちのはしゃぐ声が聞こえたのか、立て付けの悪そうな引き戸が開き、おばあちゃんが顔を出した。
「あら、今日も来てくれたのね。お茶を持ってくるから待っててね」
優しい笑顔でそう言ってくれた。
「ありがとうございます!」
私たちは出された麦茶を飲みながら、学校での出来事などをおばあちゃんと話した。
そんなふうにゆっくり過ごしていると、あっという間に日が暮れていった。
スマホで時間を確認したRちゃんが口を開く。
「そろそろ帰らなきゃ。またね、おばあちゃん!」
それからコロに向き直る。
「コロもバイバイ!」
私たちは手を振り、その家をあとにした。
今思えば、あれがおばあちゃんと交わした最後の会話だった。
私たちは定期テストや部活で忙しく、しばらくおばあちゃんの家へ行けずにいた。
ようやくテストが終わり、久しぶりに家を訪ねた。
しかし、チャイムを鳴らしても誰も出てこない。
留守なのだろうか。
それからというもの、パタリとおばあちゃんの姿を見かけなくなった。


























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