その村は何年もの間、好天に恵まれていた。
作物は毎年豊作。
飢える者もおらず、村人たちは穏やかで豊かな暮らしを送っていた。
ある日、村の主が若者たちを集めて言った。
「このままでは、我々の存在意義がなくなってしまう」
若者たちは顔を見合わせた。
「何のことですか?」
主は深いため息をつく。
「長い間、嵐のひとつも起こせていない。干ばつも洪水も、疫病すらだ」
「そこで考えた」
「お前たちの中から一人を選び、聖者への生贄として差し出そうと思う」
ざわめきが起こった。
一人の若者がおそるおそる尋ねる。
「差し出された生贄は……どうなるのですか?」
主は静かに答えた。
「善行の限りを尽くし、聖者となって帰ってくる」
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