証言者:鈴木拓也(仮名)、29歳、フリーランスカメラマン場所:北海道上川郡、廃村(具体的地名は伏せる)面談日時:2026年1月22日、午後9時、オンライン通話
鈴木は「廃墟写真家」だ。全国の廃村、廃校、廃病院を撮影し、SNSで公開している。フォロワーは12万人。
しかし、2023年9月以降、彼は「ある場所」の写真だけは、決して公開していない。
「2023年9月23日です。北海道の、ある廃村に行きました。名前は——言えません。というか、言いたくない。」
「その村、1970年代に無人になったんです。炭鉱が閉鎖されて。住民は全員、都市部に移住して。」
「私、朝10時くらいに到着しました。車で。村には15軒くらいの家が残ってて。全部、ボロボロ。屋根は崩れ、窓は割れ。でも、形は残ってる。」
「最初の5軒は、普通に撮影しました。いい写真が撮れました。光の入り方とか、朽ちた木材の質感とか。」
「問題は、6軒目です。」
「村の一番奥。他の家より少し大きい。たぶん、村長の家か何か。玄関のドアが、半分開いてました。」
「私、中に入りました。」
(彼の声が、わずかに震える)
「土間。埃だらけ。床は腐ってて、踏むとミシミシ音がする。奥に、居間があって。そこに——」
「テーブルがあったんです。」
「それだけなら、普通です。でも——テーブルの上に、食器が並んでた。5人分。茶碗、箸、湯呑み。」
「そして——それが、全部、新しかった。」
「埃もかぶってない。まるで、今朝使ったみたいに。」
「私、『おかしい』って思いました。この村、50年以上無人なのに。食器が新しいわけない。」
「でも、確かにそこにある。」
「それで——私、写真を撮りました。何枚も。後で確認するために。」
「そのとき、二階から——音がしたんです。」
「ギシッ、ギシッって。床を歩く音。ゆっくりと。」
「私、固まりました。『誰かいる』って。でも、車は私のだけだった。他に誰も来てない。」
「音は、階段を降りてきました。ギシッ、ギシッ、ギシッ——リズムが一定。機械的。」
「私、玄関に向かって走りました。でも——」
(15秒の沈黙)
「玄関のドア、閉まってたんです。私が入ってきたとき、半分開いてたのに。今は、完全に閉まってる。」
「そして、背後の階段——音が、止まりました。」
「私、振り向きたくなかった。でも、振り向いちゃったんです。」
「階段の下に——人が立ってました。」
「5人。男が2人、女が2人、子どもが1人。全員、昭和初期みたいな服装。全員、じっと、私を見てる。」


























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。