それは、ひどく蒸し暑い夏休みの午後のことだった。
俺と友人のタカシは、立ち入り禁止になっている古びた親水公園の、干上がった池の底に降りて遊んでいた。
そこで、俺たちは「それ」を見つけた。
干からびた泥の中に、ちょうど手のひらサイズの、どこか引き込まれるような怪光を放つ鱗を纏った魚の死骸が埋まっていたんだ。
「これ、スゲェな。宝石みたいだ」
タカシが興味本位で、その死骸の背中についていた大きな鱗を一枚、無理やり剥ぎ取った。
バリリッ、と、生きているものを引き裂くような嫌な音が響いた。
それが「いけないこと」だとは、その時の俺たちは微塵も思っていなかった。
異変が起きたのは、その日の夜だ。
タカシからLINEで写真が送られてきた。
『昼間の池のせいかな、腕がめっちゃ痒い』
写真に写っていたタカシの腕には、小さな、硬そうな「かさぶた」のようなものがびっしりと並んでいた。
でも、それは普通のかさぶたじゃなかった。
光の加減で、あの池の死骸と同じ、あのくギラリと光っていた。
翌日、学校の図書室で会ったタカシは、真夏だというのに長袖を着て、ずっと首元を掻きむしっていた。
「ちょっと見せてみろよ」
俺が袖を捲り上げると、そこにはもう、人間の皮膚なんて残っていなかった。
手首から肘にかけて、硬質で、ぬらぬらとした鱗が隙間なく生え揃っていたんだ。
タカシが指先でそこを掻くと、ボリボリと、まるでプラスチックを削るような乾いた音がした。
「これ、剥がすと気持ちいいんだよ……」
タカシはうっとりとした目でそう言うと、自分の腕に爪を立て、鱗の一枚を無理やり引き剥がした。
血は出なかった。代わりに、そこから透明な、生臭い液体がじわりと溢れ出し、剥がれた跡からは、すぐに「次の鱗」が顔をのぞかせていた。
その光景に吐き気を催しながら、俺は自分の右手に、得も言われぬ違和感を覚えた。
……痒い。
手の甲を見ると、そこには小さな、真珠のような突起ができていた。
「……なにこれ。」
俺がそれを指でつつくと、突起は瞬く間に広がり、皮膚を突き破って、あの鱗が姿を現した。
タカシが剥がした鱗を一枚、俺に差し出してきた。
「お前も、やったろ? あの時。一緒に剥がしたもんな」
























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