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心霊

前花しずくさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

エアドロ
短編 2025/08/23 22:12 931view

ボクは昔、地域の子供劇団に入っていた。
その関係で俳優や舞台の道に進む知り合いも何人かいた。

これはその中の1人、3つか4つ上の先輩の話だ。

駆け出しの俳優のたまごというのはとにかく貧乏。昼は稽古で夜はバイト。
言ってしまえば売れないバンドマンと同じようなものだ。

先輩は一応小さい劇場を持つ劇団に所属した。
それに伴って劇場のある都心に程近い、東急の各停しか停まらない駅から徒歩15分のボロアパートに住むことになった。

稽古初日、ラッシュを過ぎて立ち客が多少いるくらいの電車に乗り劇場に向かっていた時だった。
スマホを眺めていると画面上部に通知が現れる。

それはエアドロの共有通知だった。iPhone同士で画像をやりとりできる、アレだ。

送り主は知らない人の名前。

間違えて送ったか、あるいはいたずらか。
なんとなく周りを見渡してみるも、乗客はほぼ全員スマホを見ているので分かりはしない。

無視しても良かったが、先輩は電車に乗っている間ヒマだったこともあって、共有を受け入れてみることにした。

画像を開くと、そこにはどこかの山頂だろうか、山の上からの景色と大きい記念碑が写っている。
そして記念碑の横には金髪長髪で口髭を生やした男が『イェーイ!』という顔とポーズで写っているのだった。

どこからどう見てもパリピ。
恐らく陽キャがふざけてランダムに画像を送りつけているんだろう、とそう思ったそうだ。

また次の日、稽古に行くために電車に乗り込むと、またしてもエアドロの通知が届く。
同じ名前だった。

画像を開くと今度は複数人が写っている。
茶髪の女の子が1人と、天パーメガネの男が1人、そして例の金髪長髪の男と、もう1人(画像を保存したわけではないので覚えていないらしい)の計4人が、変顔をして集合自撮りしている写真だった。

圧倒的パリピ。
背景が薄暗いステージのようだったそうで、典型的なバンドマンらしかった。

3日目も同じようにエアドロが届いた。
開くとどこかの路上で金髪長髪の男が自撮りしている写真。「ギャハハハハ」とでも聞こえてきそうな満面の笑み。

その背景に先輩は見覚えがあった。
小さい何を売っているか分からない商店の前に立っている、激安自販機。
それは先輩が住んでいるアパートから駅に向かう道中、少し遠回りをしたところにある自販機だった。

(こいつ、ご近所さんだったのか)

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