新卒で入社した東京の建築会社にいた時の話です。
面接時に基本的に出張は無いと聞かされて入社したのですが、運悪く上司が現場で事故を起こしてしまい、入社3ヶ月目にして人手が足りないとの事で長野の現場に出張で行く事になりました。
その現場は日中と夜間の工事がある現場で、私は基本的に日中の工事を担当し、ビジネスホテルのマンスリープランを利用して最初の何ヶ月かは仕事をしていました。
事故を起こしてしまった事もあって、現場はかなりシビアだった事を覚えています。
しかし災難は続くもので、配属されて2ヶ月後には夜間の工事でも事故が起きてしまいました。
そこで途中から責任を取って部長が夜間の工事を見る事になり、現場から程近いマンションを一部屋借りる事になりました。
部長が来てから約2ヶ月後、部長は体調不良の為入院する事になり、現場を離れました。
そのタイミングで上司にマンションは工期が終わるまでの契約にしてるから、現場からも近くなるしホテル代も浮くからそこに移り住むように言われたのです。
部長の荷物の運び出しも兼ねて物件に向かった際、そのマンションの隣には神社がある事を知りました。
敷地内に足を踏み入れると何故か急に鳥肌が立ち、その異様な雰囲気に足がすくみました。
部屋は2階だったので階段を利用したところ、下を向きながら歩いていた私は階段の3段目に女性の白い脚を見ました。
ゾッとしつつも気のせいと思い込み、そこを避けて駆け上がりました。
部屋に着くと日が差して明るいはずなのに何故か私にはとても暗く見え、渦巻く陰の雰囲気に圧倒されました。
私は霊を見る事はできませんが、そういった雰囲気を感じる事はできるみたいで、そういった場所に近づくとすぐに体調を崩す為、心霊スポットなどは普段から行かない、近づかないように気を付けていました。
部長に急かされ、何往復かして車に荷物を詰め込み、その日は終えました。
翌月からそちらに移り住む事になったので、それまでの数日にお守りやお札を揃えておきたいと思い、まずはその隣の神社に参拝に行きました。
神社は本殿とその隣にお稲荷様の社があり、鳥居も2つで2箇所から入って参拝するような形になっていました。
本殿の参拝を終えお稲荷様の社に向かったところ、周りの大木が騒めき、また鳥肌が立ちました。
神社は神聖な場所と思っていたので嫌な風に感じた事は無かったのですが、その時は一刻も早くその場を立ち去らなければと思いました。
何故そんな風に感じるのか気になり、休日にその神社周辺を歩いていたおばあちゃんやおじいちゃんに、神社やお稲荷様の社について聞いてみました。
3人に聞いたのですが、その内の1人のおばあちゃんから、お稲荷様の周りに大木が何本かあるが、そこに縄を掛けて首を吊る罰当たりな者が昔から何人もいる。死後の世界では助けてもらえるようにという気持ちでそこに縄を掛ける者が度々現れる為、地域住民はその神社はあまり参拝をしなくなっていった。という話を聞きました。
そんな事をしても救われる訳がないので、隣にあるあのマンションの居住者に助けを求めてやってくるのではないかと、あの階段の女性の脚を思い返していました。
それから数ヶ月は住まなくてはならない私は、その話を聞いてせめてお祓いをと思い、神社でお札を買って部屋に入り、玄関、キッチン、廊下、リビング、トイレ、と、出て行ってもらえるように願いながら部屋の中を順にまわりました。
トイレに入った時、壁をドン!ドン!ドン!と3回強めに叩かれ、隣人ガチャにも外れたのかと凄く憂鬱な気分でその後部屋を出ました。
しかしそのタイミングでその部屋が角部屋だった事を思い出しました。
部屋は2階ですが、部屋に面する道路からトイレの壁のある部分を叩く事は物理的に不可能です。
私は冷や汗をかきながら部屋を後にしました。
それから他の神社もいくつかまわって様々なお札を買い、部屋の各所に配置したところ、なんとか住める様な環境になったと内心感じました。
移り住んで1ヶ月後、部長の訃報が届きました。
1週間ほどの入院と連絡を受けていたので、かなりショックが深かったのを覚えています。
そして更にその部屋が怖く感じました。
部長の残していったものは、申し訳ないと思いつつも全て処分しました。
それから2ヶ月後、なんとか早めに工期を終え、無事東京に戻る事になりました。
その部屋を去る日の前夜、こんな事もあったと思い出せる様に、仕事帰りに建物の写真を撮ろうと思い付きました。
田舎のマンションやアパートは、夜になると共用部の廊下などの電気が消えるという場合が多く、私の住んでいたそのマンションも真っ暗だった為、ナイトモード機能を使って建物の全景を撮りました。
その時は撮った写真を見返す事なく、翌朝の新幹線で長野を発ちました。
やっとあのマンションから離れられる事に安堵し、帰りの新幹線内で昨晩撮った写真を見返しました。
1枚目、私の住んでいた部屋のベランダに真っ黒な5人の人影が映っていました。
すぐさま削除したところ、次の写真に移動したのですが、昨晩写真は一枚しか撮った覚えはありません。
よく見ると写真には建物は映っていませんでした。
ブレつつも斜め下を撮る画角でシャッターが切られていて、そこには自分の足と、その真正面に真っ白な女性の脚が並んでいました。






















とてもリアルに書いてあって、読んでいるだけで背中がゾクゾクして怖かったです。