Nがそれに気づいたのは、漢字ドリルが配られてから3日がたった頃だった。
そのひ、いつものように友達のNとYと遊び、教室に戻ったら、Nが、
自分の教科書とYの漢字ドリルを見て言ったんだ。
「これ見ろよ、漢字ドリルの漢字が俺だけ違う。」
そんなことはないと思い、俺のとNのを見比べると、Nのドリルには、「死」とか「呪」とか、
とにかく、そんな字が並んでた。
そのことを先生に伝えると、先生はただ、
「わかりました。出版社に連絡して、取り換えてもらいます。」
と、抑揚のない声で告げられた。
1週間後、取り換えられた新しいドリルが届き、
Nがほっとしたような顔で、ページをぱらぱらとめくった。
でも、変わってなかった。悪趣味な字が並べられ、さすがに先生も違和感に気付いたのか、
「今日は、N君は、もう帰っていいですよ。」
と気を遣って言ってくれた。それもそうだろう。Nは、顔を真っ青にして、
とても心配そうだったのだから。
1か月後、Nの顔は、死人のような足取りで、いまにも倒れそうな表情をしていた。
なぜかって?
ずっと気味が悪い事件が続いていたのだったから。
ある日は血でぐしょぐしょになったぬいぐるみがポストに入っていたり、
またある日は自分の勉強用具に、得体のしれない何かが入っていたり。
最近はそのせいで眠れていないそうだ。
一瞬の出来事だった。
「もうやだぁ、うぁあああん」
Nがそう言いながら窓から飛び降りた。
数秒遅れて、ぐちょっという音が鳴ったかと思うと、校庭に血しぶきが飛び上がった。
先生が駆け付け、僕はその時の情報をできる限り正確に話したつもりだが、
パニックになっていたのでちゃんと話せたかどうかはわからない。
でも、その時の先生の目は覚えている。
その目は、同情と、呆れと、悲しみが入り混じっていた。

























めっちゃ良かった!