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さまざまさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

遺影
短編 2025/01/26 16:33 654view
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俺の家はごくごく普通の、田舎によくある親戚がやたら多いだけの何ら特別なこともない家系だ。
しかしひとつだけ、ある特殊な現象がある。
その現象について書き留めておこうと思う。

それを初めて目の当たりにしたのは、忘れもしない幼稚園年長の時だった。
その頃は父が忙しくほとんど家を空けていた為、父の弟である叔父がよく遊びに来てくれていた。
当時20代だった叔父は歳の離れた兄のような存在で、その頃の俺にとっては父より大切な人だったかもしれない。

その叔父がある日、いきなり
「写真館で写真を撮りたい」
などと言い出した。
俺はその日公園に行きたい気分だったので駄々をこねて嫌がったが、いつもは俺の言うことを何でも聞いてくれる叔父がとんでもなく怖い顔をして
「行かなくちゃいけないんだ!」
と叫んだ為、何も言えなくなった。

で、わざわざスーツに着替えて近所の写真館に行き、まるでお見合い写真のような立派な写真を撮ってもらったのだ。
俺はただ付き添っただけで写真を撮ったのは叔父だけ。
写真を撮り終えた叔父は満足気な表情で、いつものように俺の手を引いて公園に連れて行ってくれた。
そしてその3日後に、バイクの事故で亡くなった。

小学校に上がってから、今度は曽祖父が老衰で亡くなった。
この曽祖父も亡くなる一週間ほど前にいきなり写真を撮りたいと言い出し、わざわざ自宅にカメラマンを呼んで写真を撮っていた。
この時に呼ばれた親戚の人達が
「もう歳だものね…」「今は元気だけど…」
と、暗い表情で話し合っていたのを覚えている。

この時やっと理解した。
人は死ぬ前に写真を撮りたくなるものなのだと。
本人に自覚が無くとも、きっと無意識的な部分がそうさせるのだろう。

俺はこの現象が、誰にでも起こる当たり前のものなのだと思っていた。

それが普通ではないことを知ったのは中学生の時。
祖母を亡くした友達が「遺影にできる写真がなくて困っている」などと言い出した。
俺は思わず
「亡くなる前に写真撮りたがってなかったの?」
と聞いた。
当然友達はポカーン。
「いや、そんな死を予知するようなことしないだろ」
と笑われてしまった。
帰宅後にそのことを母に伝えると
「それが普通なのよ。うちが特殊なの。だからあんまりそのこと他所で喋らないほうがいいよ」
と言われた。

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