手を洗わせてください
投稿者:紙魚虫 (3)
学生の時の話。
友人の家で二人で遊んでいた時、その場のノリで私たちの共通の友人であるTと電話を繋げることになりました。Tは快く通話を承諾てくれ、私は音声通話をかけました。
私たちは学校であった話や先生の愚痴で盛り上がり、通話ごしでしたがTも楽しんでいたと記憶しています。
異変があったのは会話が一段落し、お互いに無言になった時のことでした。
スマートフォンのスピーカー口からTではない声が聴こえてきました。
「手を…洗わせてくれませんか?
手をっ…洗わせてくれませんか…?
すみません…手を…」
声の高さからおそらく女性の声。ですがTの声ではありません。
意味のわからない言葉。
抑揚があり、確かに誰かがそこでしゃべっているかのような声。
なのにどこか人間味がなく無機質で…。
まるで人間以外のものが人間のフリをしているような。
その声が聴こえた瞬間、私は本能的に通話を切りました。
なんとなく、そのほうがいい気がしたのです。
私は恐怖と驚きとで固まっていましたが、一緒にいた友人はあまり動揺せず、「なんだったんだろうね。」と事も無げに言ったのを覚えています。
私はTに
「回線悪くて切れちゃったみたい!ごめんね」
とメッセージを送り、 からいつも通りのおちゃらけた返信が返ってきたことを確認してから友人の家を後にしました。
Tとは、今も仲が良いです。
ですが、あの時一緒にいた友人が誰だったのか思い出せません。同じクラスだったような気がする、と思い卒アルを見てもそれらしい人はいません。Tに聞いても心当たりがないと言われました。他校かもしれない、とも思いましたが私には他校の友人はいないはずです。
記憶を頼りにすれば、あの友人の家にたどり着くと直感で感じます。
でも、怖い話でよくあるように、その家の場所が空き地になっていたら、そう考えると怖くてたまらなく、私はいまだにその場所に行けていません。
友人と通話すると、このことを思い出します。
そして、こんなことを思います。
あの時、あの声は の電話口から聴こえてきたと思ってましたが、もしかしたら、私のほうから聴こえていたのではないかと。
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