廃ビルでの出来事
投稿者:吉記 (1)
小学生の頃、近所の商店街の裏に「桃ビル」と呼ばれる4階建ての細いビルがあった。
当時はそのビルがなんなのか知らなかったが、後になってからあれがソープランドだったと知った。
と言っても当時はもう営業しておらず、ボロボロのビルにピンクの桃のロゴが印象的な看板が残っていただけだった。
確か小4くらいの時だったと思う。
クラスメイトのAが突然
「桃ビルって横から入れるって知ってた?」
と言い出した。
廃墟になっていた桃ビルは当然入り口が封鎖されていたが、彼の話によると正面から右手に回ると鍵のかかっていないドアがあるらしい。
「俺の兄ちゃんの友達が肝試しに行ったら、女の裸の写真があったらしいよ」
そんな話を聞いたら入ってみたくなるのが子供というもので、俺とAとBの3人で行ってみることにした。
桃ビルは商店街から外れたところにあるため、人目はさほど気にならない。
しかし夕方になると近隣のスナックやバーが営業を始めるため、多少人通りが増える。
それなら夕方以降より人の少ない昼間がいいということで、夏休みの昼間に行くことになった。
当日、俺達は人目を避けるように遠回りして桃ビルに到着した。
「ほらこっちこっち」
小声のAに手招きされ、ビルの右手側にこそこそと入る。
なるほど、確かにそこにはドアがあった。
Aがゆっくりドアノブを回して引くと、ギギイイと嫌な音を立てながらドアが開いた。
「ほんとに開いたよ!」
俺達は誰も見ていないことを再確認し、ドアの中に入り込んだ。
「うわ、暗っ!」
慌てて懐中電灯をつける。
視界に飛び込んできたのは残されたデスクと何も入っていないファイル。おそらくこの狭い部屋は事務所として使われていたのだろう。
棚も見てみたが、書類らしきものは何一つ残っていなかった。
「女の写真なんてどこにあるんだよ〜」
3人でぶつくさ言いつつ次の部屋へ向かうことにする。
ドアを開けるとそこは細い廊下になっており、奥には螺旋階段も見えた。
ここで初めて、桃ビルに地下があることを知った。
「なあ、地下降りていい?」
好奇心旺盛なBはそう言いつつも、勝手に階段を降り始めていた。
仕方なく俺とAも後に続く。
しかし地下の床は浸水しておりとても降りられる状態ではなかったため、急いで引き返した。
Aはこのあたりから何故か無言になってしまった。
面白いほど怖かった