揺れる歩道橋
投稿者:三井戸 (2)
歩道橋が揺れる。
そういう事象に遭遇したことはありますか。
国道に建設された歩道橋では、稀に起きることがあるのです。車が高速で行き来することで、震度4ほどの揺れが起きることがあります。
ただ、今回の話はそんな小さな揺れのお話ではありません。
それはそれは、立てぬほどの。「腰が抜ける」ほどの揺れと異変に遭遇したお話をさせて頂きます…………
それに遭遇したのは、帰路についていた時のこと。
星一つ見えない夜空に満月が浮かび、悴んだ両の手に息を吹き掛け、歩道橋を渡っていた時のこと。
両耳に差したイヤホンでお気に入りの曲を聞いていたためか、注意散漫になっていました。
周囲には人も車も通っておらず物静かでした。夜、というのもありあましたが、それでも異様なほどに誰も居なかったのです。
だから。歩道橋の半分ほどの位置で異変に遭遇した時に、初めて逢魔時に足を踏み込んだことに気がついたのです。
ぷつん、と音楽が鳴り止む。周囲の音がくっきりと聞こえる。最初は何一つ音が聞こえず、人も車も通っていないことに気がついた。
可笑しいと思ったその時、イヤホンの接続が突然切れた。充電も十分にあったにも関わらず『Disconnect(回線切れ)』とアナウンスが聞こえた。
スマホを取り出し電源をつける。時刻は11時くらいを差している。画面上部のアイコンをみれば、都市部であるにも関わらず圏外であることを通告していた。
それに疑問を抱く間は。
与えられることはなく。
足元がぐらつき始めた。
ぐわん、ぐわん。と大地震とも思える揺れに耐えられず、私は膝をついた。
ぐわん、ぐわん。と定期的に揺れる様に、地震などではないと感づいた。
ぐわん、ぐわん。と歩道橋が揺れる。揺れる。揺れる。
そうして揺れる度に。重々しい音が響いていることに気がついた。
その音はイヤホン越しにもはっきり聞こえることが出来る。それは左手側、満月がある方向から聞こえたのです。
一つ。二つ。三つ。鳴る度にその音は大きさを増し、揺れと音の擦れが徐々に狭まっていた。
何が起きているのか。そう疑問に思った私は音が鳴る方を振り向き、それを見た。
見たのだが、全容が見えない。
だから、それを目視しようと。私は上を。上を見上げ。
夜空に、満月が三つ。浮かんでいたのを見つけました。
いえ、満月ではありません。
それは大きな白い「両の目」で、三日月型の白い孤がやや下側にあったのです。えぇ、それは顔面でした。
その体躯は昏い霧で成り立っていて、その背丈は月の高さほどの高さを有している。
巨人が、闊歩していました。
不思議な体験ですね。