息子の行き先
投稿者:三井戸 (2)
何故。今その話を思い出したのだろうか。
私の息子が帰ってきてないと、探しに出るべきではないのかと夫と話していた18時のこと。
その話を聞いた私は、先週の授業参観で聞いた息子の言葉を思い出す。
地域学習の発表会で語られた息子が調べていた逸話が、妙に脳裏にちらついた。
あれはそう。
「僕は、水神について調べてきました」
そうだ、水神だ。息子だけが神についての調査をしていたから、そのこともあって妙に覚えている。
昔この地域では大洪水が発生し、大人子供問わず、多くの死者が出たそうだ。
そこで水害が二度と起きないように、水に関する神である水神を祀る石碑を建立したそうだ。
その石碑を見つけたことが調査のきっかけであったと息子は語っていた。
「僕はその石碑について詳しい人を探して、聞いたお話をまとめました」
先に話した、水神についての話もそう。
この発表で話された内容はすべてその詳しい人に聞いたものであると、その日の夕食時に息子が教えてくれた。
名前は教えてくれなかったけど、おじいちゃんみたいに肌がよぼよぼで親切な人と話したと言っていて、少し心配に思っていたのだ。
「水神は、龍や蛇であったり河童などの姿であると思われているみたいなのですが」
そうだ、この後息子はなんと言った。
「この地域の水神は蛇で、その神使は河童であると教えて貰いました」
「河童って存在するの? と聞いたら、存在するって言っていました」
「こっちに来たら詳しい話はわかるって言ってましたが、時間がなかったのでまた次会う時に教えて欲しいって伝えました」
「なので、また今度お話を聞きに向かいたいと思います」
…………あぁ、思い出したのはこの発想に辿り着くためだったのか。
夫にすぐに外に出ると伝え、玄関に向かう。
警察に電話しておくと背後から夫の声が聞こえ、軽く返事をして駐車場へ。
そして車に乗り込み、駆けだして。
心当たりのあるところへと、走り出す。
これは、私の中では怖い話しNo.1です。