緑髪の女

もう２５年以上前の話です。

あれは、私が小学２年生のときのお盆の夜でした。
末っ子だった私はお盆時期に帰ってくる年の離れた兄や姉と過ごすことが毎年の行事になっており、いつも楽しみにしてました。

私は兄弟姉妹が多く、お盆の時期には帰省してきた兄や姉とお話ししたり、遊んだりすることが楽しみでしたが、唯一折り合いの悪い兄が一人いました。この兄とは喧嘩が絶えず、当時兄がちょっとグレていたこともあり、近寄り難い存在でした。（ちなみにその後色々とあって、今では仲良しです。）
そんな兄はちょうどこの年のお盆に学校の部活合宿が開催された関係で実家に不在でした。そのため、当時兄が嫌いだった私は嬉しくて仕方ありませんでした。

兄を除く兄弟姉妹が集合し、無事お盆のイベントが終わり、夜になって寝る時間が訪れました。

冒頭で書いた通り、兄弟姉妹が多い大家族だったため、部屋が足らず、和室や応接室で布団を引き雑魚寝するような形でみんなで眠りにつきました。
この日私は和室で眠りました。

その夜、今でも忘れることができないものを目にすることになります。

夏とはいえ、実家近辺は夜間網戸にすればそれなりに涼しく、クーラー無しで眠れる日もありました。そのため、電気代節約も兼ねて、その日も網戸にして眠りました。

ただ当時の私は網戸にして夜眠ることについて、ちょっと抵抗があり、悪い人が入って来ないか？怖いもの見てしまわないか？といった恐怖心があり、嫌だなと思っていました。

一度就寝した後、何時間かして、夜中目が覚めました。その時にはもうだいぶ涼しくなっていたので、もう窓を閉めてもいいだろうも思い、窓を閉め、再び眠りにつきました。

そして何時間かして再び目が覚めました。
何故か生暖かい風が部屋に吹き込んでいることに気付きます。
おもむろに体を起こし、窓を見ました。

すると…窓が空いている…。何で閉めたはずの窓が空いているんだ？？
しかも中庭に植えてある木の葉が風で揺れている。
いや、ちょっと待て、暗いのに何で木の葉がはっきり見えるんだ？？
あれ？うちの中庭の木って、あんな形の葉だっけ？
その葉はまるで柳の葉のようでした。

おかしいと思い、よく見ると葉では無く、緑色をした長い人の髪のようでした。
さらに暗い中を良く目を凝らして見る木の幹だと思ったところは、茶色ではなく白色で木ではありません。ひょっとして誰か立っている？

思わず私は「誰？」というと…

その人物がこちらを振り返り、もの凄い形相で雄叫びを上げて睨みつけてきました。

そこには緑色の長い髪で白装束を着た異常に肌の白い女性が両手を広げながら立っていました。明らかにこの世のものとは思えない、とても生きている人間には見えない、そのように感じました。
あまりの恐怖に気絶してしまいました。
しかも何故かその女性の顔は私の兄の顔によく似ていました。

翌朝、目を覚ましたときに窓を見るときちんと閉まっていました。
あれは夢だったのか？夢にしてはリアル過ぎましたので、ちょっと混乱しました。
また、起きた後、怖くてしばらく震えていました。しかし夢であれば起きてしばらくすれば、大半の内容は直ぐ忘れてしまうもの。何年経ってもこの出来事を忘れることは出来ず、実際に体験したようなリアルなものでした。