見えるようになったキッカケ

私は普通の人が見えないようなモノを見えてしまいます。世間一般的に言うと、｢幽霊｣や｢オバケ｣というものでしょうか。そんな私が見えるようになったキッカケをお話します。

私がまだ幼い頃。小学校に上がる前の年齢の時でした。まだ、オバケという存在が分からず、活発だった時、私は怖い思いをしたことがきっかけで、その日からこの世のものじゃないものを見えてしまうようになりました。

まだ幼かった私は母と公園で遊んでいた時のこと。毎日公園で遊んでいるといつも若い女の人が犬を散歩に連れて公園の中に入ってきていました。当時の私は犬が大好きでいつも触らせてもらい、女の人が帰る時にアメをひとつ貰ってニコニコ笑いながら手を振って去っていく、というのが日課でした。母もその当時のことはよく覚えていてくれたそうです。違う意味で。だけど、ここからは完全に私だけが知っているお話。

いつも犬を連れた女の人が帰って行った後は母がいつも｢そろそろ帰るわよ｣と私を無理やり帰らせようとしてきていました。その理由は後でお話します。まだ、お昼の3時半なのに、まだ30分しか公園にいないのにも関わらず帰らせようとしてきていたのに違和感を覚えていたのを今でも記憶に残っています。だけど私は帰りたくなく、いつもいじけて座り込んでいましたが、大体抱っこをされて帰らされていました。

だけど、その日は母が無理やり帰らせようとしてくる時間を覚えてきていた頃だったので、ずる賢くなった私は、小さい体というものを武器に母の目を盗んで砂場の近くに小さな洞窟なようなものがありその中で身を隠し息を潜めていました。母は私がいないのに気づき、焦って必死に探しているようでした。焦っていた母は数分もしないうちに公園から出ていき、どこかへ向かっていった様でした。私は母が居なくなったのをいいことにその中から出て、一人で遊んでいました。

いつからかそこにいたのかは分かりませんが、私が滑り台で遊んでいた時、母がいつも座っているベンチに、腰掛けているおじいさんがいたのに気づきました。そのおじいさんはじっと私を見つめ、何かを呟いているようでした。私は頭の中がハテナになりながらそのおじいさんを見ていると、距離が5mほどあったのにも関わらずおじいさんが言っている言葉がなぜか耳に入ってきたんです。

｢○○ちゃん、こっちにおいでぇぇ｣

私は重苦しいような心にズンっと重く響く声にビックリし、体を強ばらせ滑り台の柵に腕をしばりつけ、抱きしめた形でその場で座り込んでしまいました。その人はゆっくり滑り台に近づき、階段を登ってきました。どこかに連れていかれる。そう思った時、母が父と祖母を連れて公園に入ってくるのが見え、ほっと安心しました。だけど、その安心もつかの間、さっきまで階段を登って私をどこかへ連れていこうとしていたおじさんはいなくなっており、その代わりとでも言うかのように、滑り台の階段には血の跡が残っていました。

私はびっくりした怖さと母と父と祖母が戻ってきた安堵に泣いてしまいました。この後は母や祖母から聞いた話です。

私が見ていたおじさんは、私が産まれる1年前に公園ができる前の一軒家に住んでいた人だったそうです。その人はいつものように娘が欲しいと言いながらある日突然、居なくなったそうです。最初は行方不明との事で操作が行われていたようですが、ちょうど私が生まれたその年に自宅の地下倉庫から白骨化した遺体が見つかったそうです。それがちょうど滑り台のある辺り。首を吊って自殺、との事だったようです。このおじいさんが出るのが夕方の4時辺り。だから、母は私を無理やり連れて帰っていたようでした。

そして、私が毎日のように見ていた若い女の人とその犬のことも、母も知っているからと思い尋ねてみましたが、母は見えていなかったようです。セミロングのボブで、いつも白のトップスとロングスカート、犬はチワワ。そう伝えると母はビックリしていました。母が言うには、私はいつも公園の隣にある誰も住んでいない一軒家をじーっと見つめていたこと。そして急に動きだしたかと思えば見えない何かにバイバイと手を振る姿しか見えていなかったようです。

そして、私が話したその女の人の特徴を聞いて母はこう、言いました。

｢その人は…死んじゃったお母さんのお姉ちゃんだよ｣

よく分からなかった、のが当時の私でしたが、今では分かります。そういった母の悲しい顔。もしかしたら、私の守護霊だったのかも知れません。

私が幼い時に起こったこの体験を機に私はその時から他の人には見えないものが見えてしまうようになりました。これが私の見えるようになったキッカケです。