これは私が体験したことです。
ある冬の日に行きつけのバーで少し酒を飲むかと足を運んだ。
10年ほど贔屓にしている店で基本的に店長が一人で経営しており、忙しい時にたまにいるバイトの男子、
店に来る客ともほば顔見知りになっているような店だ。
店内に着くと忘年会シーズンに入っていたせいか店内はほぼ満席、
時間は夜11時を回っており終電も近いため、席を立ち会計をする酔客で店長はばたばたしていた。
顔見知りの常連客のため雑な接客を受け空いている席に座っていると
奥の席にいたよく見る常連客の4,5人がまとめて帰ろうと狭い店内のさらに狭い出入口の扉の前で
何やら名残惜しそうに話し込んでいる。
身長、年代、見た目、仕事もバラバラの男性の集団だ、その人達が入り口付近にたむろすると
冬ということもあり開きっぱなしのドアからの冷気がこらえる。
彼らとは常連として顔見知りでもあるので、軽くこちらにも挨拶される。
「先に帰るね」「また今度」など酒を飲んだ者特有の適当なやつだ
終電のピークが過ぎて、ひと段落した店内は店長を合わせて数人。
接客を出来なかったことを謝罪されつつ忙しいのはいいことだと注文をする。
すると店長が酒を注ぎつつ、少し話しだした。
「さっき常連さんがまとめて来ていたじゃないですか・・・
実は先日、この店でバイトをしていたMという男子が自殺したとお母さんから僕に連絡があってね、
来ていただいている方にお伝えしているんですよ。」
まれにバイトをしていたM君は確か22歳くらいの大変若い男子で人懐っこく
愛想のよいバイトだった。
私は大変驚いて店長に、それは本当のことか、本当にM君が?と問いただすが
信じられないのは分かるけど本当のことだと伝えられた。
「いや、店長さん、信じられないのは、そうじゃない。」
私は続けて
「さっき常連さんの団体の中にM君はいたじゃないか」
何を言っているんだという怪訝な顔をして、冗談はやめてくれと店長はいう。
「私だってさっき帰った常連客の中にM君がいたから冗談はやめてくれと思ったよ」
と伝えると。
そうか、M君この店好きだったんですね、嬉しいなと。
なんだかしんみり話しだしてあまり使わないキャンドルに火を落としつつまた話をする。


























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