曾祖母の告別式で
投稿者:take (96)
短編
2023/03/29
12:59
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知人のR君が五歳のとき、曾祖母が亡くなりました。
彼と曾祖母とはほとんど面識がなく、死というものがよく理解できていませんでした。
両親と通夜に出るため、泊まりがけで出かけ、たくさんの大人たちが立ち働いているのを見たり、同年代のいとこたちと遊んだりして、イベント気分だったそうです。
曾祖母の告別式は、住んでいた地域の公民館で執り行われました。
大きな祭壇を前に、お坊さんがお経を読み、大勢の大人たちが喋らずにシーンとしているのを見て、静かにしてなきゃいけないんだな、とR君もおとなしく座っていました。
それまで聞こえていたお経が途切れて一切の音が消え、おやと思って周囲を見回しました。
すると会場や集まった人たちがすべて色褪せてモノクロに見え、時間が止まっているように見えたのです。
隣に座っているお母さんに話しかけても、全然反応してくれません。
気づくと、祭壇の上あたりにモヤモヤとした金色の雲のようなものが浮かんでおり、雲の周りには赤や黄色や青や緑といった、光の粒がキラキラと光っていました。
辺り一面モノクロなのにそれだけが鮮やかなカラーで見えているのです。
なんだろう、と思っていると、『ドン』と大きな衝撃音がして、金色の雲が消え、同時に周囲の色彩や音が戻ってきたのだそうです。
周りに話しても信じてくれないけど、絶対に夢じゃなく現実だったとR君は言います。
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