寝てたらよくあるアレでおかしな体験をした

私は一度だけ夢と現実が合わさったような奇妙な体験をしたことがある。

あれは高校生の頃だった。
私は勉強も運動も人並み程度で、休み時間は友達と喋って過ごすような平凡な学生。
毎日そんな感じで高校生活を消費してたんだけど、ある日、今でも忘れられない体験をした。

夜、寝ていると体が奈落に落ちる感覚ってある皆もあると思うんだけど、あれ「ジャーキング」っていう筋肉の収縮らしい。
疲れがたまってる時に起きるらしいんだけど、私はその日、体がビクッとなった瞬間に頭の中が虹色に包まれたような、何か脳にバグが起きたような感覚に陥った。

そのせいで真夜中に飛び起きたんだけど、視界も触覚も問題ないことを確かめて、異常がないと分かれば少し心配になりながらも再び就寝した。
これまでジャーキングは何度か経験あったけど、今みたいな頭がおかしくなった感覚は初めてだったので、何かの病気かと思って随分と焦ったのを記憶してる。

朝になって、お母さんとお父さんにその事を話すと、お母さんは「ちょっと、あんた大丈夫？病気とかじゃないわよね」と心配してくれたが、お父さんは「ああ、あのしょっちゅうなるやつか。あれビクッとなるよな」とトーストを頬張る片手間に笑ってた。

とは言っても、起床してから特に体に異常は無かったから、その日も普通に学校に行った。
それが間違いだったのかもしれない。

学校に行って普通に授業を受けて、休み時間になった時のこと。
私は馴染みの友達と喋ってたんだけど、何か急に視界にノイズが走るような歪みが生じて、目の前で話してる友達二人の顔がのっぺらぼうになった。
「え？」と驚いた後には、もう元に戻ってて、友達は私の驚いた顔を見て「どうしたの？」と不思議そうにしてた。
で、私が「大丈夫、何でもない」と言った途端、友達が「急に真顔になるからビックリしたあああああああああああああ」と、ゲームとかでキャラクターが喋ってる最中にフリーズして音声が一音だけずっと垂れ流しになるバグみたいな状態になった。

「え？え？」と二度見する勢いでその友達を見ると、何か顔がカタカタと震え始めてて怖くなった。
隣のもう一人の友達に「ちょっとＡ子（※バグってる友達）おかしいんだけど！ねえ」と話しかければ、よく見るともう一人の友達のＢ子も首を傾けながらカクカクと痙攣してた。

ビーーーーーーーーって感じの電子音に似てるかもしれない。
二人はそんな音を口から発しながら首を曲げて延々とカクカクと痙攣してた。

その時は何かの発作なのかと思って慌ててクラスの誰かに救急車か先生を呼んでもらおうと「だ、誰か、ちょっと！Ａ子とＢ子が…」と振り返ると、教室にいたクラスメートが軒並み私の方を向いて首から上を震わせていた。

体は静止したまま。
首から上だけは何故か首を傾げるような恰好でひたすらに小刻みに痙攣させているのだ。

意味が分からなく私はＡ子達を置き去りにして教室を飛び出し、職員室に向かった。
でも、廊下とですれ違う生徒は全員フリーズした状態でＡ子達みたいに首から上だけが震えていたので怖かった。
それにどうしてか、顔だけは私に向けられているのが不安でしょうがなかった。

それで職員室のドアを力任せに開けて「先生！」と叫ぶと、職員室には普通に授業の準備をすすめている他の先生や、のんびりとコーヒーを飲んでて私の声にびっくりして吹き溢しそうになってる先生なんかがいた。

あれ？先生達はみんな普通だ。
なんて思いながら、私は担任を見つけ出して「先生、ちょっと来てください」と切羽詰まったように腕を取り、強引に職員室から連れ出した。
先生は「おおい、おい、何だ何だ」と困惑してたけど、私は「いいから」と教室まで一緒に走らせた。

でも、教室に先生を連れて来ると、クラスメートは普通に活動してた。
みんなそれぞれの時間を過ごすようにぺちゃくちゃと談笑してて、Ａ子とＢ子も私が戻ってきたのを見つけて「ちょっと〇〇！どうしたの急に飛び出して」と首を傾げてた。
どうやらＡ子達から見て、私は急に席を立ち上がって教室を飛び出して行ったらしい。
先生は「何がどうした？」とちょっと迷惑そうな顔をしてた。
私も何が起きているのか分からなかったけど、一先ず先生に「す、すみません。寝惚けてました」と頭を下げると、先生もよく分からないといった面持ちで「まあ、何もないならいい」と半笑いで頭を描きながら許してくれた。